小学校の実践事例
伝えたい気持ちがふくらんで子どもたちの中で深化する学び
〜 「はっぴょう名人」でニュース番組づくり 〜
石川県・金沢大学教育学部附属小学校
子どもたちの伝えたいことと、先生方の伝えたいこと。 それぞれを発信するために、子どもたちは、先生方は、 どんな工夫をし、どんな形で受信者のもとへとその情報を届けるのか。 授業実践と校務へのヒントの2部構成でお届けする。
伝えたい思いが
さらなる展開を生む
「はっぴょう名人」で作成したプレゼンシートを一通り見直し、 発表前に手直しする子どもたち。
「それぞれのグループが、何を伝えようとしているのか、考えながら発表を見てください」
担任の笠松先生がそう子どもたちに告げる。5年3組、国語科の授業。伝えたいことをニュース番組仕立てにして発表 する「ニュースを伝える」という単元が行われている。6つの班に分かれ、伝え る内容を決め、伝える対象を絞り、取材・調査し、はっぴょう名人でまとめる。 それがここまでの流れだ。
班ごとに発表内容を一通り見直したのち、4班から発表スタート。それぞれの発表内容は下の表の通りだ。
発表を終えた子どもたちに感想を尋ねると、 「緊張して、練習のときのようにうまくしゃべれなかった」「言葉に詰まってしまって焦った」 と残念がる子どもがいる一方で、 「練習よりもうまくできてうれしい」「タイミング良くパソコンを操作できた」 と満足感たっぷりの子も。そうした中で、 「今日の発表だけじゃもったいないよ」「伝えたい人にちゃんと伝えたい」 という声が子どもたちから自然とわき上がった。
ポスターや発表会、放送など、いろいろな情報伝達の手段を考える子どもたち。 笠松先生も、発表のさらなる発展に単元の延長を決意。我々はその結果を再度取材させていただくことにし、それから2週間後、再び金沢を訪れた。
細部にまでこだわる
ポスター作り
実際に貼る場所へ行き、印刷したポスターをあてがってみる。 「イスの色が薄くて見づらいかな?」「赤いバツは目立ってイイよね」
ポスターをA3で印刷。授業中でも待たせない速さが子どもたちの学びを加速させる。
子どもたちは再度グループ分けをし、1班と5班の発表を基にポスターを作るグループと、6班の発表を基に校内放送をするグループに分かれて作業をしている。ポスターを作っているグループは試し刷り、校内放送をするグループはリハーサルがこの日の主な内容だ。
ポスターは1〜3人で1枚ずつ、「はっぴょう名人」で制作が進められている。パソコンに向かう子どもたちに聞くと、 「操作が簡単だし、使えるイラストもいっぱいだからポスターも作りやすい」 とのこと。
実はこの附属小、子どもたちがジャストスマイルを使い始めたのは1月末のこと。それから1カ月あまりで使いこなしてしまうとは、と、笠松先生も驚く。
納得いくまで作り込めた子どもから印刷に入る。考えていた通りに刷り上がって笑顔の子どももいれば、モニターで見ていた印象と違って首をひねり、作り直すために再度パソコンに向かう子どもも見られる。
刷り上がりに満足した子らは、実際にポスターを貼 る場所まで持って行き、ガラスで透けたときの色合い や、壁の色とのマッチングなどを確認。 「ちょっと色が薄いかな?」 「もっと目立つように文字を太くしようか」 など、さらに良いものにしようと意欲全開だ。
テーマ決めから取材、原稿執筆に至る流れ(6班)。
1班 | 2班 | 3班 | 4班 | 5班 | 6班 | |
対 象 |
新1年生 | 新1年生 | 全学年 | 新4年生 | 全学年 | 全学年 |
内 容 |
学校の良いところと危険なところを紹介。学校の見取り図を用いて、それぞれの施設を多面的に見せた。 | 季節ごとの学校行事の紹介。1年生対象ゆえ、漢字を使わずにひらがな、カタカナのみで構成されている。 | 新規に導入されたパソコンについて紹介。どんなことができるのか、クイズを交えて参加型の番組に。 | 図書、放送、交流、掲示、美化の各プロジェクトを紹介。プロジェクトは学校をより良くするためにあるとまとめる。 | 校内の安全について。校舎内で危険な場所を写真で示し、ケガの多い学年などグラフを用いて紹介した。 | 清掃や草刈りなど、学内の見えないところで仕事をしている人について取材。自分たちにできることを考えた。 |
5年3組担任。「子どもたちの学びの欲求には驚かされますね。国語科の単元が、総合的な学習の単元へとつながりました」