見える「評価」で授業が変わる! 〜ルーブリックで授業作り〜
第3回 初めてのルーブリック
神奈川県座間市立立野台小学校 江口慎一(えぐち・しんいち)先生
理科離れが叫ばれる中、子どもたちの意欲を掘り起こそうと、ルーブリックに着目した先生がいる。
先生にとっても、もちろん子どもたちにとっても初めてとなる理科+ルーブリックはいかなる効果をもたらすのか。
神奈川県座間市立立野台小学校に伺った。
息を合わせて
つながる電気の輪
全員でつなげる前に、班でつなげる実験。5つの豆電球が見事に光り、歓声が上がる。テレビの取材も入っていて気が散りやすい環境下でも、子どもたちは実験に夢中だ。
「さん、にぃ、いち、ぜろ!……ついたぁっ! !わあぁっ! !」
長い廊下に子どもたちの歓声が響き渡る。カウントダウンの後は、「いち、にぃ、さん……」と逆にカウントアップ。 10を超え、50を超え、ついには100を数えても、まだやまない子どもたちの声。そして光り続ける小さな豆電球。つながっている一つの輪。
立野台小の3年1組、理科の授業。クラス全員が理科室の横の廊下で輪となり、それぞれに一つずつの豆電球と乾電池を持って導線でつなぐ。全員のタイミングが合わなければ、豆電球は点灯しない。みんなで考えた大実験だ。
実験と思考とを繰り返し
明かりがつく法則を見つける
江口先生の板書。電気を通すもの、通さないものを、子どもたちの発言から切り分けていく。
3日間通じての授業は、まず、豆電球に明かりがつく法則をみんなで考えるところから始まった。どんなつなぎ方をすれば豆電球がつくのか、導線の間にいろいろなものを挟んでみたらどうなるのか、子どもたちはさまざまに考えて実験を行う。その結果、導き出された法則は「乾電池のプラス極→導線→豆電球→導線→乾電池のマイナス極と、一つの輪になってつながっている」と豆電球がつく、というものだった。
続いては、電気を通すもの、通さないものについて調べる実験だ。各自持ち寄った文房具や日用品などを、片っ端から導線と電池の間に挟んで調べる子どもたち。つくもの、つかないものを分類し、ワークシートに書き込んでいく。
取材に伺った3日目は、そのまとめからスタートした。電気を通したものはどんな素材だったか、通さなかったものは何だったのか、子どもたちの自主的な発言を板書しながらまとめるのは担任の江口先生。「みんなで見つけた法則をもとにして、クラス全員でできることはないかな?」
そんな問いかけが、冒頭の大歓声につながっていった。
子どもたちと作り出す
実践ルーブリック
この単元の目標は、乾電池と豆電球、導線を使って子どもたち一人ひとりが試行錯誤する中で、電気を通すつなぎ方と通さないつなぎ方、電気を通すものと通さないものを比較し、自分の言葉で友達に伝えることにある。そして、その要となるのがルーブリックだ。「この単元においては、『比較』をポイントに子どもたちの思考を深めたいと考えました」と江口先生。「『比較』にポイントを絞ることで、子どもたち自身が試行錯誤しているポイントや、自身の意見と友達の意見との違いや共通点について、理解しやすくなるのではないかと考えたんです」
江口先生は、この単元の初日、子どもたちと共に実践ルーブリックづくりを行った。思考ルーブリックから単元ルーブリック、そして実践ルーブリックへの流れは下表の通りだ。
今年の1月中旬にルーブリック研究会に加わったばかり。5年間の教職ののち、大学院で2年間評価について学び、再び教壇に戻った。