見える「評価」で授業が変わる! 〜ルーブリックで授業作り〜

第1回 ルーブリックとは
関西大学総合情報学部 教授  黒上晴夫(くろかみ・はるお)先生 

ルーブリック
それは「ものさし」

黒上晴夫先生

黒上晴夫(くろかみ・はるお)先生
関西大学総合情報学部教授。メディアを活用した授業デザインやカリキュラム開発、「学び」に関するシステムや評価法などについて実践的な研究を行っている。『総合的な学習のための評価への羅針盤』(日本文教出版)『教育改革のながれを読む.高次な思考力育成を目指して』(関西大学出版部)など、著書多数。

「また新しいカタカナ言葉?」「ただでさえ忙しいのに」「評価基準なら学習指導要領で十分だろう」……そう敬遠される方も多いかもしれない。事実、黒上先生も開口一番「評価基準を作るのは、それはそれは大変です」とけん制する。

しかし、その大変さを補ってあまりあるほどのパワーを、「ルーブリック」は秘めているのだ。

下枠内でも解説している通り、ルーブリックとは評価基準のことである。絶対評価を行うための「ものさし」と考えると分かりやすいだろう。例えばここに、長さ9cmの棒があったとする。9cmと知らせずに長さを問えば、だいたい何cmかを目算することはできても、人によっては8cmだったり、10cmだったりと異なった答えが返ってくるだろう。しかし、正確な「ものさし」があれば、そして測り方が分かっていれば、ほぼ全員が9cmと答えるはず。つまり、誰が評価してもほとんど誤差がなく、評価が一致し、誰もが「9cmだ」と納得できる。それが「ものさし」であり、「ルーブリック」なのだ。

見える「評価」で
何が変わるのか

ルーブリックという具体的な評価基準を設けることで、どんな効果が表れるのだろうか。黒上先生はこう語る。

「最大の効果は、子どもたちが自らの立ち位置を自覚し、より高い次元を目指そうと意欲的に学ぶことです」

黒上先生らが作成し、実践しているルーブリックは、教師陣だけのものではないのだという。

「ルーブリックを子どもたちにも理解できる言葉に置き換えて、授業の際に明確に提示する。ここがポイントです」

子どもたちは明示された「ものさし」を受けて、何を期待されているのかを知る。10cmに届けばこれだけの評価をもらえる。20cmに届けば次の段階に進める、というように目標が具体的になり、その目標に到達するために子どもたちは懸命に努力する。

「しかも、自分がどの段階にいるのか、自らの学びを振り返りながら、意欲的に努力するんですね」と黒上先生。ルーブリックによって、子どもたちは自分の成長の度合いを自分で知ることができるのだ。

 
評価項目(1) 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
評価項目(2) 評価基準 評価基準 評価基準 評価基準
S:
Super(期待する思考活動以上に、何かプラスαが見られる)
A:
十分満足できる(期待する思考活動が十分見られる)
B:
概ね満足できる(期待する思考活動は見られるが、未到達な部分もある)
C:
努力を要する(期待する思考活動が見られない)

■ルーブリックとは

ルーブリックとは、子どもの学習到達状況を評価するための、評価基準表のこと。

黒上先生らが研究するルーブリックでは、右のような表を用いる。縦軸に複数の評価項目を置き、横軸にはその到達レベルをS・A・B・Cの4段階で定義する。子どもの学びが各評価項目のどのレベルまで到達しているかを測ることで、ブレのない、客観的な評価が実現可能となる。