見える「評価」で授業が変わる! 〜ルーブリックで授業作り〜

第3回 初めてのルーブリック
神奈川県座間市立立野台小学校 江口慎一(えぐち・しんいち)先生   

具体的な評価語で
ブレない評価基準を

廊下でつながる3年1組の輪

廊下でつながる3年1組の輪。最高で123までカウントすることができた。

「子どもたちが自己評価するにあたって一番大切なことは、やはり子どもたち自身が納得できる基準を作ることだと考えています。そのためには、子どもたちの言葉で、分かりやすい評価語で書かれたルーブリックである必要があります」

江口先生のクラスでは、これまでも3段階の自己評価法を取り入れていたが、具体的な評価語を用いたルーブリックの導入は、今回が初めてだという。 「今までは、評価の基準を私が提示していました。ですが、その基準がとても抽象的だったんですね。例えば『詳しく書けたら』『分かりやすく説明できたら』というように、人によって解釈の異なってしまう、あいまいな言葉が多かったんです」

「詳しく」「分かりやすく」という言葉の基準は何だろうかと子どもたちと話し合ううちに、「プリントを1枚書けたらB」という基準が、子どもたちから自然発生的に生まれ出た。

目標が見えることで
意欲的な学びに

さまざまな感想を述べる子どもたち

「とにかく面白くて楽しかった」「1人で光らせるより、みんなで光らせた方がキレイで楽しい」「クリスマスツリーよりキレイだと思った」「もっと大人数でやってみたい」など、さまざまな感想を述べる子どもたち。中には「みんなにありがとうと言いたい」と成長を感じさせるものも。

「1枚書けたらB、書けなかったらC、2枚以上書けたらA、その上で自分の言葉でみんなに説明できたらS、という具合に、Bが決まったらほかもスムーズに決まりました。みんなが納得して決めた基準ですから、授業中もそれを意識して、意欲的にプリントを書いている姿も多く見られましたね」

子どもたちはついつい実験に夢中になりすぎて、実験の経過や結果を書かずに進めてしまうことが多かったという。しかし、ルーブリックという基準を設け、 「1枚でもちゃんと書けばB」「もうちょっと書けばA」と子どもたちが次の目標を把握していることで、より意欲的に、自発的に学ぶ姿勢を見せた。 「もちろん、『プリントを書くこと』が目的になってしまわないように、『比較』というポイントに絞ったワークシートを作りました。子どもたちが得た『比較』の発想・実験を言葉や絵に落とし込んでいくことで、自分の中で整理され、まとめる力も身に付きます」

書き記したことは新たな実験へのヒントにもなる、と江口先生。今後の課題として、こう語ってくれた。 「今回、子どもたちの自己評価で多かったのが『AとSの間』というものでした。AからSへ、基準としては少々飛躍しすぎだったのかな、というのが今回の反省点です。子どもたちの学びのレベルをよく見極めて、ルーブリックを生かした授業づくりを進めていきたいですね」


子どもたちのワークシート1
初日からA評価だった子は、さらに工夫してSを目指す。それでも自らSとは言いにくいのか、AとSの間と答える子が多い。
  子どもたちのワークシート2
初日は真剣にやっていなかったせいで自らB 評価を下した子も、翌日には頑張ってA評価に。

◆神奈川県座間市立立野台小学校

神奈川県のほぼ中央に位置する座間市。大きさ約100畳、重量約1,000kgの「座間の大凧」を揚げる祭りには、10万人もの観光客が押し寄せる。児童数562名。宅間二郎(たくま・じろう)校長

取材/西尾真澄 撮影/齋藤 浩(スタジオエイブル)
※情報誌『Justsystem&School』25号掲載。
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。