小学校の実践事例
ICTを生かして獲得する"情報"的視点
〜 自ら学ぶ子どもたちのために〜
岡山県・和気郡和気町立佐伯小学校
「超」教材、
それがICT
パソコン上で『Google Earth』を示しながら佐伯と近畿の古墳を比較させる木村先生。マウスひとつで地表を見下ろすかのように衛星航空写真を自在に閲覧できるこのソフトに、子どもの目はくぎ付けだ。
子どもたちが何らかの気づきを得たら、その画面をプリントアウト。子どもたちへの個別対応にも不自由しない高速性と、印刷部分にもすぐに書き込みのできる速乾・耐水性が授業で威力を発揮した。
もちろん「ICTありき」の授業ではない。資料集や図鑑などを含めた適材適所で、子どもたちの課題が気づきへと導かれていく。
さらに先生は、1人の子どもをパソコンの前に招き寄せて、その画面を指し示した。世界中の様子を衛星航空写真で見ることのできるインターネットアプリケーション『Google Earth』だ。
マウス操作で自由自在に移動、拡縮表示のできる地上の様子に、子どもの目がグッと引きつけられていくのが分かる。
「ここが佐伯だね。で、グーッと移動していくと、ここが大阪。ほら、これ教科書で見たことあるんじゃないかな」「これ、仁徳天皇陵ですね」「そうそう。こうして見ると回りにもたくさん小さな古墳があるね……」
こうして言葉を交わしながら、子どもの課題を深め、興味を高めていく先生たち。続いてGoogle Earthの<定規>機能を使って子ども自身に仁徳陵の大きさを測らせ、さらに佐伯上空へととって返し、「もしここに仁徳陵サイズの古墳があったら……」と問いかける。
「教科書や資料集には、古墳そのものの図版しかありませんから、周囲の様子が十分に理解できない場合もあります。陪塚(主となる古墳周囲に随伴して作られた小型の古墳)の様子やその土地の生産力などを直感的に理解できる教材として、Google Earthのようなコンテンツはとても有効だと思っています」と木村先生。
そして、ここで活躍したのがGELJETプリンターだ。子どもたちが気づきを得たGoogle Earthの画面を、その場で印刷。子どもたちはプリント上にも自由に自分の気づきを書き込むことができる。
「情報機器の進化のスピードは驚くほどですが、それに流されるのではなく、メリットを見極めて上手に授業に生かしていきたいですね」と津田先生。25年の経験を持つベテラン教員だからこそ「使える」機材や教材を見分ける目は鋭い。
ICTはあくまでも授業の手段に過ぎない。けれどもその特性を理解し、生かすことができれば、それは単なる道具や教材の域を超えた「学びの体験」を生み出していけるのではないだろうか。
この日の授業の成果は後日、子どもたち一人ひとりが『佐伯古代探検隊』と題した新聞の形にまとめた。自分の課題と予想、検証を通じて得た自分なりの結論が図やグラフ、自分の言葉で生き生きと表現されている。