学校 DE デジカメ

第4回 「いろんな視線で撮ってみよう!」&「デジカメの特殊撮影」
カメラマン&ライター/西尾琢郎

自分のものでない目を
手に入れること

最近では、防水機能を備えたデジカメも手ごろな価格帯で入手できるようになりました

▲最近では、防水機能を備えたデジカメも手ごろな価格帯で入手できるようになりました。

「鳥の目、アリの目、魚の目」は、子どもたちに、自分以外の目になってものを見ることを教えてくれます。それを入り口にして、今度は鳥などの生き物だけでなく、違う立場の人の目線を実感できるような授業も考えられるでしょう。例えばカメラを低い位置に構え、ズームで望遠気味に撮影することで作り出す、低い視点と狭い視野の「幼稚園児の目」、わざとピントを外し、やはりズームを望遠気味にすれば、弱い視力の「お年寄りの目」を体験できるなど、アイデアはさまざまです。

 

防水でないデジカメの場合は、防水ファスナーつきのビニール製パックなどにデジカメを入れて水中撮影すれば、このような「魚の目」の写真が撮れます

▲防水でないデジカメの場合は、防水ファスナーつきのビニール製パックなどにデジカメを入れて水中撮影すれば、このような「魚の目」の写真が撮れます。

このとき、同時に考えたいのがデジカメでシミュレートしたその「目」で見たとき、被写体が、世の中がどう見えるかです。「相手の気持ちになって考える」とは、多くの単元で求められる「付けたい力」の代表格。デジカメを使った学びを生かせば、それを言葉だけに終わらせず、体験を伴った気づきとともに、意識的に行える「思考の手法」として子どもたちの中に定着させることができるので はないでしょうか。

▼活用のヒント
本誌の仕事を通じて学校へとお邪魔すると、いつもいろいろなことに気づかされます。「気づき」という言葉に出会ったのも、この仕事を通じてでした。子どもたちは自ずから好奇心を持っています。その好奇心を自然なままに引き出し、伸ばしていくことができたら、どんなに素晴らしいでしょう。そんな自然な学びを「気づき」と呼ぶのではないでしょうか。
  デジタルカメラは、子どもたちがその好奇心のおもむくままにいろいろな挑戦をすることができ、しかもその結果がその場で分かることから、実にたくさんの「気づき」を生み出す可能性を秘めた道具だと言えます。 どうか子どもたちとデジカメにたくさんの接点を与えてあげてください。そして子どもたちが何かに気づくその姿を注意深く見守ってあげてください。きっとその中には、先生自身、思いも寄らなかった新しい発見があるはずです。

デジカメ撮影のツボ
【特殊撮影】

写真は「真を写す」というその呼び名に反して、多くのトリックを生み出してきました。「合成写真」などはその分かりやすい一例です。一方、芸術としての写真がその表現力を高めるために生み出したテクニックや、例えば青空を見たままの深い青に写したり、光の点に十文字の光条を発生させたりするなど、肉眼で見た印象そのものを伝えるために工夫されたテクニックがあり、そうしたテクニック( 映画の特撮とは違いますが、ここでは仮に特殊撮影と呼びましょう)は、プロカメラマンや一部上級者だけのものでした。

ところがデジカメの登場は、そんな特殊撮影さえ、より多くの人が楽しめるようにしてくれたのです。今回はそうしたテクニックのひとつとして「インターバル撮影」に挑戦してみましょう。

インターバル撮影とは、一定時間ごとにシャッターを切り、同じ被写体を連続的・継続的に撮影することです。植物や自然現象の定点観測などに用いられることが多く、かつては専用の装備が必要であり、フィルムの枚数にも限りがあるなどの理由から、一般には敷居の高い撮影技術でした。

ところが、現在のデジカメでは、それなりの容量のメモリーカードを使えば数百枚という撮影も当たり前にでき、しかもインターバル撮影機能を備えた機種も数多くあります。こうした機能を持ったデジカメを使って、例えば花の開花や昆虫の羽化、天候の変化などを撮影すれば、多くの授業で役立つ教材となるでしょう。また撮影した画像をパソコンでスライドショーにまとめれば、テレビの自然番組もかくやという作品が作れるかもしれませんよ。


上空の雲の流れ 午後上空の雲の流れ 夕方上空の雲の流れ 夜

▲窓からの風景を、約40 分おきにインターバル撮影してみました。たったこれだけでも上空の雲の流れなどが連続的、相対的に観察できて非常に楽しいものです。

 

▼活用のヒント
インターバル撮影機能は、すべてのデジカメに付いているわけではありません。しかし、カメラを三脚に固定し、決まった時間にシャッターを切れば、同様の撮影を行うことができます。このほか、デジタルカメラの普及によって可能になった特殊撮影に、長時間露光があります。商品化されたばかりの頃のデジカメは、長時間シャッターを開け続けると撮影データに多くのノイズが入り、使い物になりませんでした。しかし、今では改良が進み、数秒〜数十秒、あるいはそれ以上、シャッターを開けたままでも観賞に耐える画像が得られるようになってきました。マニュアル設定が使えるデジカメで、シャッター時間を設定できる機種をお持ちなら、ぜひ長時間露光を試してみてください。川や滝の流れを数秒のロングシャッターで撮影するだけでも、肉眼で見るのとは全く違う世界が見えてきますし、夜空の星を数分に渡って撮影すれば、円周運動する星空の様子が一目で分かる貴重な教材となるでしょう。

※本文中の情報は、すべて取材時のものです。