小学校の実践事例

キライにさせない英語活動
〜3年生からの英語が秘める可能性〜
富山県・富山市立星井町五番町小学校

英語嫌いにさせないために

子どもたちにも大好評のカード。

子どもたちにも大好評のカード。GELJETプリンターなら、数十枚の両面カード印刷もあっと言う間にプリント可能だ。


カードはあらかじめ深井先生がGELJETプリンターで両面印刷しておいたもの。

カードはあらかじめ深井先生がGELJETプリンターで両面印刷しておいたもの。「薄い紙に印刷したせいか『イラストが透けて見える』という声もあったので、裏柄はもっと濃い色にした方が良さそうですね」

会話文に出てくる単語は、どこにも板書されず、またテキストもない。それゆえに会話の途中で言葉に詰まってしまう子もいる。しかし、子どもたちの会話がそこで途切れてしまうことはない。分かる子は分からない子に手を差しのべ、相互に教え合い、学び合いながらゲームを進めているのだ。

もちろん、深井先生と佐伯先生のきめ細やかなフォローも光る。深井先生はこう語る。

「前時の自己評価が低い値だった子や、普段から話すことが苦手な子を中心にフォローに当たっています。できる限り一人ひとりに声がけをするためにも、支援講師の存在は大きいですね」

また、支援講師は3〜6年生各学年の支援も行っているので、授業内容を構築する際にも、進みすぎや遅れがないかどうか確認してくれるのだという。

星井町五番町小での英語活動は、総合的な学習の時間の枠内で、3年生から35時間程度実施し、英語によるコミュニケーション能力の基礎を培っている。

「耳も口も、頭も心も体も柔軟で順応性が高い小学生の、特に低学年のうちから英語に親しむことは、とても意味のあることだと思います。そして、何よりも大切なことは、子どもたちが英語を嫌いにならないこと。『分かる』と『好き』は同義です。コミュニケーションツールとしての英語への好奇心を育て、英語で何かを伝えたいという意欲を掘り起こして、中学につなげたいですね」

英語から広がる活性化の波

ばばぬきゲーム。ばばぬきゲーム。手元に残るは1枚。さて、どのカードを選ぶ?

2人1組でのカード交換を2、3度繰り返したところで「First game finish!」と深井先生。

「次はグループで『Do you have a notebook?』と『Yes, I do』『No, Idon't』だけ言えればできるゲームをします。Do you know "Babanuki"?」

知らない子のいないばばぬき"。ジョーカーの代わりに投入されるのは、深井先生の似顔絵が描かれた「teacher」のカードだ。これには子どもたちも大い に盛り上がる。

「カードを引くときには、自分のほしいカードを相手が持っているかどうか、『Do you have a○○?』と聞いて、YesかNoか答えてもらってから引いてください。では『teacher』を1枚入れて配り直して、Ready go!」

一斉に「Do you have a○○?」と始める子どもたち。「teacher」のカードを引いてしまった子が、「No!」と頭を抱えるシーンも見られる。

「中学年のうちは、まだ発音自体を恥ずかしがる子も少なく、むしろ積極的に発話してくれるので、授業も組み立てやすいですね」と佐伯先生。

1人、2人と上がる子が出てきたところで、ゲーム終了。残る5分で今日の授業の振り返りを行う。自己評価カードが配られ、子どもたちは自己評価と感想を書き込む。

「ちゃんと数をたずねることができたのでよかった」

「筆箱の2つの言い方が難しかった」

さまざまな感想がある中で、簡単だったことと難しかったことを箇条書きでまとめる子もいる。授業のめあてに照らして、自分の立ち位置をしっかりと意識し、わずかな時間で紙面を埋める子どもたちの集中力と表現力には驚かされる。

最後は取材陣にまで「See you!」と手を振ってくれる子どもたち。みな笑顔だ。

「子どもから『英語って丁寧だね』と言われたことがあるんです。その時はドキッとしました。英語に触れることで日本語を見直し、改めて大切に感じるようになるんですね」と深井先生。「日本語にも丁寧な言葉があるよね」と国語の学びにもつながり、また、伝えたいという意欲やコミュニケーション力も確実に他教科に伝播し、活性化しつつあるという。

 

「それに、英語活動以外の授業では、子どもの発言や回答に対して『Ok,Good!』ぐらい丁寧に反応しているだろうか、と反省することも」

 

英語活動は子どもたちだけでなく、先生にとっても授業のあり方を見直すよいきっかけになったようだ。

 

星井町五番町小における英語活動導入の成果は、いたるところに表出し始めている。

ここにも注目! ベテラン教師の掲示術
掲示期間を終えたポスターやカレンダーを活用し、半分に折ってワイヤにかけるだけ。机を向かい合わせにして、両側から同時に書けることもポイントです

「掲示期間を終えたポスターやカレンダーを活用し、半分に折ってワイヤにかけるだけ。机を向かい合わせにして、両側から同時に書けることもポイントです」

室内干し掲示

秘技!室内干し掲示

3年1組の教室に入ってまず驚くのが、その掲示方法だ。斜めに渡されたワイヤに、まるで洗濯物を干すかのようにつり下げられた掲示物。これは、深井先生がオーストラリアでの研修の際に見た掲示方法をまねているのだという。子どもが立って歩いてもぶつからず、また黒板を見る際にも邪魔にならない高さにワイヤを張り、英単語や班ごとの成果物などをつり下げている。

 

>>この実践の取り組みの流れはこちら!


富山市立星井町五番町小学校

星井町小・五番町小・清水町小の3校統合の途上にある星井町五番町小は、2004年度に2校が先行統合して誕生。来年度には旧五番町小の敷地に建設されている新校舎へ移り、清水町小と統合して富山市立中央小として生まれ変わる。星井町五番町小としては最後の1年、子どもたちは思い出を強く胸に刻みつつ、学舎に元気な声を響かせている。 児童数210名、竹内美矢子(たけうち・みやこ)校長。

取材/西尾真澄 撮影/西尾琢郎
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。