小学校の実践事例
冊子にまとめてビデオで宣伝!わたしたちの地域を伝えよう
〜はっぴょう名人で交流学習の名人に〜
熊本県・天草市立下浦第一小学校
1クラス15名の単学級。クラスメート以外の同世代と接する機会を、なかなか持つことができない子どもたち。ICT環境も決して潤沢とは言えない小学校で交流学習に取り組んでいると聞き、天草へと飛んだ。そこにはどんな秘密が隠されているのだろうか。
冊子とビデオで
交流学習
授業の最後に感想を述べる子どもたち。自分の学びを振り返り、課題意識をしっかり持っている様子に驚かされる。
「今日は盛りだくさんだからね。手際よく行こう!」
下浦第一小、4年生の総合的な学習の時間。場所はパソコン室。担任の上村先生は、板書した今日の授業内容を指差して、子どもたちに告げる。一斉に「はい!」と元気よく応える子どもたち。即座に3人ずつのグループに分かれ、プレゼンの発表会が始まった。無駄な動きはほとんど見られない。
子どもたちは一学期の間、自分たちが住む地域の学習に取り組んでいた。中でも下浦の石材に注目し、その歴史や技術、石の特徴などについて詳しく調べ、さらに石工の職人さんに直接会って取材するなどして、グループごとにプレゼンシートを完成させていたのだ。
そのプレゼンシートを交流学習の道具にし、相手校の友だちに自分たちの地域を知ってもらおう、というのが今回の授業のねらいである。子どもたちの交流相手は、仙台の街中にある小学校の、同じ4年生。しかも単学級であり、学び合う相手が少ないことも同様だ。そんな2つの学校間で交流学習を行うことは、子どもたちの社会性をはぐくむことにつながると同時に、情報の発信と受信を通じて地域のことを深く知り、考えることにもつながると上村先生。これまでも、Web掲示板での交流を主に、ゴミの出し方など身近なテーマの交流を通して地域の違いを肌で感じてきた。
今回の単元では、プレゼンシートを印刷して冊子にまとめ、その冊子をPRするビデオを添えて相手校に送る。プレゼンシートをデータのまま送るのではなく、冊子にすることでパソコンがなくても見ることができ、相手校の子どもたちの中での回覧性や再読性も高まる。また、単に冊子を送るだけでなく、ビデオレターも一緒にというところがとてもユニークだ。
発表し合って
相互評価
グループごとにプレゼンを発表し合う。アドバイスも具体的で的確だ。
アドバイスを受けての修正作業。「ここは色を変えた方がいいって言われたけど、場所を変えた方が見やすいかも」と、グループ内で活発に修正案が出される。
パソコンに向かい、はっぴょう名人で作成したプレゼンシートで発表をするグループ。それに対して見る側のグループは、発表を聞き、終わったところでアドバイスを行う。
「まとめのページの感想文は、どれが誰の感想か分からないので、文の最初か最後に名前を書いたらどうかな」
「このプレゼンを作った人の名前よりも、見出しの方が知りたいと思うから、大きさを逆にした方がいいと思う」
「写真と重なっている文字が見にくいので、文字の色を変えるとか、場所を変えるとかすると見やすくなると思います」
「調べたこととインタビューの中身が混ざってしまっているので、ちゃんと分けた方がいい」
具体的なアドバイスが、子どもたちの口からポンポン飛び出してくる。アドバイスを受けた方の子どもは、すかさずそれをメモ。
続いて発表側とアドバイス側の攻守交代。先と同じようにアドバイスし合う子どもたち。相互評価の形がしっかりとできあがっている。
カタチになることの
充実感
上)印刷した4枚の紙を真ん中で折ってとじると、16ページの冊子ができあがる。
下)できあがった冊子を見ながら、ビデオの構成を考える。
次は、アドバイスを受けての修正作業だ。もちろん、そのまま修正するのではなく、グループ内で話し合い、1つ1つ取捨選択し、修正の意味を考え、消化しながら修正を行う。短い時間の中でどんどん手直しが行われ、ダイナミックなレイアウトの変更などもなされていく。
「それでは、修正が終わったグループからどんどん印刷してください。今日は冊子印刷をします」
そう告げて、冊子印刷の手順を書いた紙を子どもたちに配る上村先生。「いんさつ」をクリック→「プリンタ」をクリック→「プリンタ名」で使用するプリンタを選ぶ……と、子どもたちが印刷の段階で戸惑ったり迷ったりしないよう、極めて丁寧に書かれている。授業の流れを止めない工夫だ。
印刷指示を出し、プリンタの前に集まる子どもたち。と、間髪入れずに印刷が始まる。自動的に面付け・両面印刷されたものを半分に折り、ステープラーで留めれば冊子が完成。拍子抜けするほど簡単にできあがった冊子に、子どもたちも自然と笑顔になる。やはり画面上だけの存在ではなく、紙に印刷され、形になり、手に取れる成果というものはうれしいものなのだ。
習うより慣れろ
恐れずにトライ!
グループ全員でカメラの前に立つグループ(上)もあれば、ズーミングを駆使して構図にこだわるグループ(下)も
冊子ができあがったグループから、今度はビデオ撮影だ。撮影場所を求めてパソコン室を飛び出し、校内に散る子どもたち。教室、廊下、音楽室などさまざまな場所が撮影スタジオになる。
場所を決め、三脚を立てたところでPRの仕方を考える。とは言っても、台本やコンテなどを用意している時間はない。とにかく撮ってみようとビデオを回し始める子どもたちの度胸には恐れ入る。しかも、ビデオ撮影は今回が2度目だと言うからさらに驚きだ。
3人全員がビデオに収まるグループもあれば、1人が代表でビデオに収まり、残る2人はカメラワークに徹するグループもあって面白い。
「緊張した〜!」
「うわぁ、やっぱり恥ずかしいよ」
「どうだった? ちゃんと撮れた?」
その場で再生し、撮った映像を確認する子どもたち。さすがに機器の扱いにはまだ慣れていないようで、再生に戸惑うグループもある。しかし、そこは機転を利かせ、大勢で押しかけている取材陣に使用方法を尋ねて、あっさり解決。
「どうしよう」「どうしようか」とその場で足踏みするのではなく、まず一歩踏み出してみる子どもたちの学びの姿勢が非常に印象的だ。