小学校の実践事例

伝えたいことを伝えるには? はっぴょう名人で学校紹介  
〜相手を意識することで変わる!伝わる!〜 群馬県・前橋市立桂萱東小学校

具体的な場面設定で
子どもの意欲を高める

藤棚を紹介するために子どもたちが撮った写真

藤棚を紹介するために子どもたちが撮った写真。藤棚のどんなところを紹介したいのか、その内容に応じて写真も変わる。

「こうした実践においては、情報を発信する相手がハッキリしていること、時期も含めてゴールを見せておくことが大事だと思います。受信者を意識することで、相互評価の際の基準も変わってきますよね」

今回の実践での最終的な受信者は、前述の通り新入生の保護者である。子どもたちは、保護者に伝えるという前提で桂萱東小の特色を上げ、まずは5つに絞る作業を行った。

次にすべきは、5つの特色を伝えるための写真を撮ることだ。グループごとにさまざまな写真を撮り、選び、加工する。

「撮影の際には、アングルやフレーミングによって、同じ被写体でも違う情報が伝わるんだということを、あらかじめ子どもたちに伝えました」

 

他のグループからワークシートを渡された子どもたち

ほかのグループからワークシートを渡されると、子どもたちの口からはさまざまな感想がこぼれる。受け手から反応があることの楽しさ、うれしさも、子どもたちは同時に感じている。


番組の手直しを検討中の子どもたち

早速、自分たちの番組のどこをどう手直しするべきかの検討に入る「この写真、やっぱり変える?」「ナレーションはそのままでいいよね」と子どもたち

ポプラの木を下から見上げるように写したものと、校舎の上の方から写したものとでどう違うか。教室の一部を切り取って、子どもたちが3〜4人で写っているものと、教室全体が入るように引いて撮っているものとでどう違うかなど、授業の最初に例を提示してみせたと笠原先生。

「休み時間や放課後などにしか撮れない写真を撮りたいからと、子どもたちは授業外でも積極的に取り組んでいました」

写真撮影の日は、ちょうど曇り空だったという。しかし、曇り空を背景にしたポプラの木よりも、青空を背景にしたポプラの木がいいと、わざわざ別の日に撮り直したグループもあったとのこと。笠原先生もこう振り返る。

「例えば、春夏秋冬それぞれのポプラの写真を用意しておくとか、花が咲いている時期の藤棚の写真を用意しておくとか、そういった準備が必要だったかな、と思います。もしくは、日ごろからデジカメで写真を撮らせるなどの日常活動をさせておいて、それとこの実践を組み合わせるのも面白いかもしれないですね」

日常的な行為を
切り取って意識させる

子どもたちに説明する笠原先生

「次の時間で修正、調整をして、いよいよ新入生の保護者の方々に見てもらいます」と笠原先生。子どもたちには、9グループのうち1番よくできている作品を選ばせるが、実際にはすべての作品を放送する時間を設けられそうとのこと。

写真を撮った後は絵コンテ作りだ。写真を見せる順番を決め、ナレーションを考える。どうやって見せたらより効果的なのか、どんなナレーションを入れたらより伝えたいことが伝わるのか。

笠原先生の中では、動画での学校紹介という案もあったようだ。しかし、静止画+ナレーションの方が、その素材ごとに何度もリトライしやすいということで、このかたちに落ち着いた。ナレーション録りも『はっぴょう名人』の録音機能のおかげで簡単だったという。NGを何度出しても、子どもたちの気持ちが萎えなかったのは、簡単だからこそだ。

笠原先生はさらにこう続ける。
「自分の伝えたいことを相手に伝えるということは、日常的に誰もが行っていることですが、子どもたちは、相手がどう受け取っているか、ということまではあまり深く考えていないんですね。でも、5年生にもなると、自分の世界が隣近所だけじゃなくなってきて、伝えようとする相手が身近な存在ばかりではなくなってくる。今までは『言わなくても分かる』『あうんの呼吸』で済んでいたものが、それでは済まなくなる。じゃあどうしたらいいのか、ということを考えさせる意味でも、この実践は意味のあるものだと思います」

受信者を意識する送信者としての配慮。そして送信者の思いを受け取ろうと努力する受信者としての配慮。番組の発表会を経て、その双方を経験した子どもたちは、まさにメディアとのつきあい方学習のさなかにいるのだ。

なお、笠原先生が考案されたこの授業実践パッケージは、「メディアとのつきあい方学習実践研究会」のホームページ(http://mdtk.mlk5.net/)にて公開されている。小学校高学年向けの「学校を紹介する番組を作ろう」というタイトルのパッケージがそれだ。指導案、ワークシートなどPDF化されているので、ぜひダウンロードの上ご覧いただきたい。

>>この実践の取り組みの流れはこちら!

◆群馬県前橋市立桂萱東小学校

「豊かな心と高い知性を持ち、心身ともに健康でたくましい、実践力のある子を育てる」を教育目標に掲げ、「学びたくなる学校」「やりがいのある学校」「心のふるさととなる学校」を目指す。伸びやかに育つ子どもたちを映すような大きなポプラの木は、桂萱東小のシンボルだ。児童数595名。堀越俊子(ほりこし・としこ)校長。

取材/西尾真澄 撮影/土井渉
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。