小学校の実践事例

伝えたいことを伝えるには? はっぴょう名人で学校紹介  
〜相手を意識することで変わる!伝わる!〜 群馬県・前橋市立桂萱東小学校

桂萱東小学校校舎

自分が伝えたいことを相手にうまく伝えるためには、どんな工夫をすればよいのだろうか。プレゼンテーションソフト『はっぴょう名人』で学校を紹介する番組を作る過程において、情報の受け手と送り手の循環を体験し、伝える相手を意識して素材を選び、構成することを学ぶ桂萱東小の子どもたちを取材した。

桂萱東小の特色を
新入生の保護者に伝える

発表中のグループ

グループごとに前へ出て、伝えたい5つの特色を発表。伝える相手がハッキリしているので、おのずと伝えたいこともグループ同士で重なり合う。

「『校庭がとても広いこと』『ポプラが高いこと』『藤棚が四季を通じていろんな姿に変わること』『本の数が多いこと』『児童数が多いこと』を伝えたいです」

3〜4人ずつのグループが9組。それぞれが作成した学校紹介番組の発表会が始まった。各グループとも最初に前へ出て、番組を通じて伝えたい5つのポイントを発表。それから番組再生開始だ。

「これから桂萱東小学校の紹介を始めます」

番組はスライド形式でナレーション入り。新入学児童保護者会の場で実際に保護者に見てもらうことを目的として作られているため、言葉遣いにまで気を配ったものになっている。

プロジェクタが投影する力作を、食い入るように見つめている子どもたち。スピーカーから流れる自分の声に、思わず照れてしまう子どもの姿も。

送り手の体験と
受け手の体験

ワークシート

子どもたちの手元にあるワークシート。「伝えたいこと」はシンプルな言葉で語られている。

ワークシートに記入中の子どもたち

1分ほどの番組を、1回目はじっくりと、2回目はワークシートに記入しながら見る。最初は速さについていけなかった子どもも、次第に目が慣れ、だんだんと、見方も、書く内容もシビアになっていく。

取材にお邪魔したのは5年生の総合的な学習の時間。担任の笠原先生は、事前にこう告げていた。
「作品は2回流します。1回目はちゃんと見て、2回目はワークシートに記入しながら見てください」

子どもたちの手元には、作成した番組に使用した写真のサムネイルと、それぞれの写真について「伝えたいこと」が書かれたワークシートが配られている。1グループにつき1枚で、計9枚。その「伝えたいこと」の下には、「伝わったか?」「アドバイスは?」という空欄が設けてある。

番組は1グループにつき1分程度。そのわずかな時間に空欄を埋めていかなければならない。次々に発表させることで、自然と時間制限を設けるかたちになり、子どもたちの目も真剣になる。

発表が進むにつれて、子どもたちも速度に慣れ、また、どういった視点で番組を見ればよいのか、どうアドバイスを書けばよいのかといったコツをつかんでいくようだ。最初のうちは、

「伝わった」
「違う写真の方がよい」
などと書いていた子どもも、徐々に
「ポプラの写真は縦の方が高さが伝わる」
「遊具がもっとたくさん写っている写真を使った方がよい」
「文集だけじゃなく、藤棚の写真もあるとよかった」
「ナレーションをもっとゆっくりにした方がよい」
「児童数は具体的な数字を言った方がよいと思う」
など、具体的なアドバイスが書けるようになっていく。

伝えたいことを
伝えるための工夫

  ◆ 子どもたちの作った番組 ◆

校庭は広く、道具もいっぱい!

校庭はとても広く、遊具もいっぱいあって、みんな楽しく遊べます。


学校のシンボルポプラの木!

ポプラは学校のシンボルのようになっています。高さは26.6メートルもあり、とても古く、歴史があります。

すべてのグループの発表を終え、ワークシートの空欄を埋めた子どもたちに、笠原先生は感想を求めた。

「それぞれ写真が工夫してあった」
「同じことを伝えるのに、全然違う写真を使っていたのが面白かった」
と子どもたち。笠原先生も大きくうなずく。

「例えば、同じ『藤棚』について伝えるのでも、藤棚を画面いっぱいに撮った写真もあれば、藤棚の下でくつろぐ子どもたちを撮ったものもあったし、文集を手に持って藤棚と一緒に撮ったものもあったよね。それから、藤棚と文集の写真を組み合わせて使っていたグループもありました。それぞれに工夫されていて、『伝えたい』という思いがあふれていたよね」

自分の伝えたいことを相手にきちんと伝えるためには、さまざまな工夫が必要であることを、子どもたちはすでにしっかりとつかんでいるようだ。

アドバイスを受けて
見直す

藤棚

藤棚は春夏秋冬いろんな姿に変わります。また『ふじだな』という文集の名前にも使われています。

図書室

図書室にはたくさんのいろいろな本があり、とても楽しい場所です。パソコンも置いてあり、何かを調べるとき、とても便利です。


桂萱東小学校の校庭

桂萱東小学校には、児童が約600人もいて、前橋市の中でも6番目に人数の多い学校です。

「それでは、各グループでワークシートをまとめて、それぞれのグループに渡してあげてください。シートを受け取ったら、どんな意見が書かれているか読んでみましょう」

子どもたちが手際よくシートをまとめはじめると、笠原先生はさらに続ける。
「ほかの人の意見を読んで、『うーん、なるほど!』と思ったらちょっと手直ししてもいいし、『えー、でも絶対ここはこうなんだよ』と思えば、そのままで構いません。意見を参考にして、自分たちの作品を見直してみてください」

1グループにつき、約30枚のワークシートが集まる。それぞれにいろいろな意見・アドバイスが書き込まれており、子どもたちの反応もさまざまだ。

「こんなこと書かれてるよ! やっぱりちょっと伝わりにくかったかなぁ」
「こんな風に書かれてるけど、この写真はそのままでいいよね?」
「写真を2枚、組み合わせてみるのはどう?」

グループ内で、すぐさま話し合いが始まる。自分たちがこだわって発信したものを、受信者の意見を参考に見直す作業に入ったところで、授業終了のチャイム。しかし、子どもたちはみな、ワークシートから目を離さず、休み時間の間中、見直しの作業が続いていた。