小学校の実践事例

デジ・アナ発想で引き出す子どもたちの気づき 
〜『地図スタジオ』+OHPの実践に見るIT─教科連携〜
徳島県・三好郡三加茂町立加茂小学校

地図作りは、以前から授業で活用されてきた学びの手法だ。これは子どもたちが自分を取りまく社会を自ら解釈し、再構成する取り組みだと言えるだろう。今回お邪魔した加茂小学校は、これまでも、遠隔交流学習で結ばれた他校と共同でマイタウンマップ・コンクールに入賞するなど、地図や情報機器の活用についてユニークな取り組みを続けてきた。その加茂小学校の新しい取り組みのようすをお伝えしよう。

授業前からあふれる熱気

徳島県三好郡三加茂町は、徳島県の北西部、吉野川の中流域に広がる緑豊かな地域だ。町のシンボルともなっている大クスノキが人々の暮らしを見守るようにそびえている。

加茂小学校では、総合的な学習の時間が設けられて以降、それを生かして、子どもたちのさまざまな可能性を引き出す教育に取り組んできた。そうした取り組みの中で、2003年には、総合的な学習の時間の成果コンテストであるメディアポストで優秀賞を受賞するなど、着実な成果をあげている。

授業開始前から、自主的にタイピング練習ソフトに取り組む子どもたち

私たちが取材にお伺いしたのは2月のこと。まだ寒さの残るこの時期ながら、情報活用室(コンピュータ室)には、授業前から子どもたちの熱気があふれていた。先生が教室に入ってくる前から、すべての子どもがコンピュータに熱心に向き合っているのだ。見ると、タイピング練習ソフト『キーボードファイターIII』に熱中しているようす。楽しみながらキーボード入力のスキルが養えるこうしたソフトは、子どもたち自らが進んで打ち込む性質のものだけに、授業時間を使うことなく操作スキルの向上が図れるという点で有効であることを実感した。

 

コンピュータ室後方の壁には、子どもたちがマウスで描いた絵が掲示されていた

また、教室後方の壁には子どもたちがパソコンで描いた絵が飾られている。そのどれもが、一見するとパソコンで、それもマウスを操って描かれたとは思えないほどのびやかな筆づかいが印象的だ。

キーボード入力とマウス操作という、パソコンという道具と接する上での基本スキルが、子どもたち自身が楽しんで取り組める活動の中で確実に培われているのが、加茂小学校の特長だろう。

手書き地図がデジタルのタネに

今回お邪魔したのは、4年2組の社会科の時間。「徳島県の交通の様子について調べよう」というテーマに沿って、これまですでに県内の交通網についてその概要を学習し、前の時間では、白地図を下敷きに、それぞれ担当した国道、鉄道、高速道路などを記入した地図作りを行っている。

この日の授業では、『ジャストスマイル2@フレンド』『地図スタジオ』を使って、自分たちが下書きした交通網地図を地図データに作り替えていく作業を行っていく。担任の土井先生は授業の冒頭、前回までの作業の流れをおさらいし、今日の授業の進め方についてその要点をおさえた。細かい作業手順の説明はなし。それは子どもたちが学び取る。

手書き地図を画面上でなぞる作業では、子どもたちの見事なマウスさばきが発揮された

『地図スタジオ』では、任意の画像を台紙として読み込み、その上で地図を描くことができるため、前回の授業で作った自分たちの地図をなぞっていく作業が簡単にできるのだ。画面上の任意の線をマウスでなぞっていくという作業は、大人でもなかなか困難で、そのためにタブレットという専用の入力装置が販売されているほどなのだが、子どもたちの様子を見ると、パソコンでのお絵かきで培われたマウスさばきのスキルがいかんなく発揮されており、苦もなく地図をデジタル化していくことに驚かされた。このソフトを使って日の浅い子どもたちだが、そもそもコンピュータの操作とは、基本的なところさえおさえておけば、後は類推で作業が進められるようにできていることを知っておきたい。

子どもたちの基礎的なスキルによって支えられた授業の中で、土井先生は、サポートを必要とする子どもへの個別指導を中心とした巡視を丹念に行っていく。IT活用が生み出す余力は、こうした子どもたちへのケアに生かされていくのだ。

プリントアウトが高める 子どもたちの「やる気」

高速なジェルジェットプリンターなら、授業の流れを妨げない

今回の授業では、交通網の地図と重ねてみるための地形図・人口分布図などを先生がOHPシート化するために、リコーのジェルジェットプリンターを活用している。

このプリンターの大きな特長は、通常のインクジェットプリンターよりも粘度の高いインクを使うことで、学校で利用することの多い普通紙でもにじみの少ない印刷が、それも非常に高速にできる点にある。さらに、インクの特性上、今回利用したようなOHPシートへの印刷にも適していると言えるだろう。

一方、子どもたちは、地図を書きすすめながら普通紙への印刷を行って、自分の作業の成果を確認したり、満足げに見入ったりしていた。パソコン画面上での自分の作業の成果が、手に取れる形になってアウトプットされることが、子どもたちのさらなるやる気を引き出しているようだ。高速なプリンターは、子どもたちのやる気にブレーキをかけず、それをグングン加速していく。