小学校の実践事例
はっぴょう名人、算数に挑む
〜「楽しい!」が伸ばす子どもの力〜
鹿児島県・枕崎市立枕崎小学校
楽しむ復習で、さらに深まる学び
子どもたちの問題作りが一通り終わったところで、坂本先生は次のステップの指示を出した。
「それじゃ、問題作りはそこまでにして、みんなで友だちが作った問題を解いていきましょう。《見る》というボタンを押して、問題のシートが表示されるようにしておいてください」
子どもたちのパソコン1台1台に、手作りの問題のシートが表示される。友だちのパソコンの前に立つと、出題されたはっぴょう名人2の装飾機能に目を輝かせる子どもたち。学習本来のめあてを見失わせない指導があれば、こうしたときめきは学びを進める力になる。問題をノートに書き写して計算。スライドコントローラーの矢印をクリックして解答のシートに切り替えて答え合わせをするという流れだ。答え合わせを終えたら、次の子どものためにシートを元に戻しておくことも忘れない。
ひとしきり子どもたちが教室内を巡り、数人の友だちの問題を解いたところで授業終了の時間。
坂本先生からは授業のおさらいも兼ねて休み時間に楽しめるソフトとして『ジャストスマイル2@フレンド』に含まれている『クイズ電たく』(左写真)が子どもたちに紹介された。今日学んできた小数の足し算・引き算の虫食い算クイズに、いくつかのボタンが「故障」した電卓を使って答えていくというもの。
1段高い思考力が求められるが、子どもたちは果敢に挑戦していく。見ている我々も休み時間であることを忘れてしまうほどの集中力でクイズに打ち込む子どもたちの姿には、強制された学びとは一線を画した、内なる学びの楽しみが花開いていることが感じられた。
ITという絵筆で得手不得手を乗り越える
枕崎小学校では、もう一つ、図工の実践を見ることができた。
この日の取り組みは、木版画の下絵作り。版画の制作では彫ることや刷ることに目が行きがちだが、まず下絵を描かないことには何も始まらない。ところが、絵に対して苦手意識のある子どもの場合、ここでつまずいてしまうケースが非常に多いのだという。
そこで今回、指導にあたった益永先生は一計を案じた。デジタルカメラでお互いの姿を撮影し、それをパソコンに取り込んでマウスでなぞることで、誰でも思ったような下絵が描けるようにしようというのだ。
枕崎小では、すでにデジカメが多くの授業で活用されているため、子どもたちもその撮影や取り込みは手慣れたもの。『ジャストスマイル2@フレンド』の『スマイルペイント2』ではこうして取り込んだ画像を台紙として利用し、その上にレイヤー(透明シートのようなもの)を乗せて簡単にトレースすることができる。
自分たちの姿がそのまま素材になることで、子どもたちのモチベーションも高いようだ。
ITという新しい「絵筆」を握らせることで、子どもたちに新しい体験を与えることができる。これはそうした実例の一つだと言えるだろう。
子どもたちの「やる気」を支援したい
授業の終了後、坂本・益永の両先生にお話をうかがうことができた。知りたかったのは、とにかく楽しそうな様子が印象的な、子どもたちの学習態度の秘密である。
「私たちは、パソコンをエンピツなどと同じ、ひとつの道具だと考えているんです。ですから、それをいかに効果的に使えるかという視点で授業に取り入れています」と益永先生。
「そうした中で、パソコンを使うことは、とにかく子どもたちにとって楽しいことなんだ、ということが分かってきました。だったら、その《楽しい気持ち》を生かしていろいろなことができるはずだと思っているんです」と坂本先生。
授業が目指すめあてへと子どもたちを導くには、ただ手を引くばかりでなく、子どもたち自身のモチベーションが大切。そのモチベーションを高めていく上でのITの有用性を、先生方は異口同音に語ってくれた。
ITを生かすことで、今まであったハードルをなくしたり、下げたりすることができる。また、そのトライ&エラーの自由さから、学びのチャンスを増やすことができる。そんな先生方の確信を実践として見ることができた今回の取材だった。
「花と緑と笑顔にあふれた学校」をキャッチフレーズに、南国鹿児島らしい開放的な校風を育んできたのが枕崎小学校。学校ホームページでは、頻繁な更新を手 軽に行うと同時に、学校内外の人たちの声を積極的に反映するため、Web掲示板プログラムを積極的に活用している。児童数626名。本坊修二校長。