小学校の実践事例
テレビ会議での取材を通じた動物園のポスター制作
〜常に問いを発する実践が子どもたちを導く〜
宮崎県・宮崎市立池内小学校
宮崎市は、早くから教育現場にパソコンを取り入れた授業を実践し、現在も文科省の計画に4年ほど先んじたインフラ整備を推し進めている先進的な自治体だ。「総合的な学習の時間」という枠組みを活かした、より活発な実践の今をのぞかせていただいた。
情報教育先進地域としての宮崎市
宮崎市のほぼ中央部に位置する池内小学校は、その名の通り「矢口の池」という大きな池に隣接し、豊かな田園地帯を臨む高台にある。
宮崎市は、昭和62年度から学校におけるパソコンの効果的利用について研究を開始、昭和63年度には市内の小中学校53校を結ぶパソコン通信ネットワークの運用を開始するなど、先進的な実践で知られている。
平成に入ってからも、常に全国水準の先を行く教育体制の充実を図ってきた。
また、九州全域での取り組みとして、博物館や水族館、動物園などの社会教育施設と公立学校とをテレビ会議システムで結び、継続的な遠隔授業の取り組みを進めていこうという活動がある。
もちろん、宮崎市でもこうした取り組みには積極的に関与しており、一部の学校や施設にとどまらない広がりを見せつつあることが注目される。
問いかけ、問い直す 子どもたちが行く手を見失わない授業
昼休みの校庭にこだまする元気な子どもたちの声がひとしきり高まり、そして静まると、いよいよ5時間目の授業開始だ。
今日の3年2組の総合的な学習の時間は、コンピュータ室で行われる。入室してきた子どもたちは、慣れた様子でグループごとに割り当てられたパソコンの前に着席した。
日直の号令で「がんばります!」の声が教室に響く。
冒頭、担任の水野先生からは、前回までの授業でやってきた授業内容の確認が行われた。
「まず最初に、何をしたかな?」 「テーマを決めました!」
現在3年2組が取り組んでいるのは、宮崎市内にある「フェニックス動物園」のポスター作り。水野先生の学級では、先に紹介したテレビ会議システムを活用して、これまで数回の動物園との遠隔授業を実施してきた。
そこで、子どもたちから、これまでの学習に対するお礼の意味も込めてポスターを制作することになったもの。テーマ決めは子どもたち自身の疑問を元に行われ、テレビ会議を通じた動物園職員へのインタビュー取材を経て、現在は文字要素を考える段階に進んでいる。
ここで先生の指示が飛び、子どもたちは前回までの授業で、すでに大筋ができあがっている文字要素がちりばめられた「はっぴょう名人」のファイルを開いた。
「さぁ、それじゃあ、今までできあがっている各グループのポスターを、ちょっと見てもらいましょう」
先生は、各グループが開いたファイルを、順次画面を切り替えながら全員に見せていく。
「他のグループのポスターを見て、気が付いたことがあったら発表してください」と水野先生。
「文字のかたまりの間が開いていて分かりやすい」
「なるほど。その開けてあるところに、この後で写真が入ってくることになるんだね」
手を挙げた子どもたちからは思い思いの感想が発表され、先生は各々の着目点を、他の子どもたちに分かりやすくかみくだいて説明していく。
単なる前回までの授業の内容確認ではなく、何のためにどんなことをし、これから何をするのかを再確認していくための指導だ。
充実した設備と行き届いたメンテナンスが印象的なパソコン教室。利用するうえでの決まりが掲示されている。