小学校の実践事例

公民館での調べ学習をテーマにした低学年でのプレゼン体験
〜うれしい気持ち、やさしい気持ちを活かした教育〜
沖縄県・具志川市立高江洲小学校

いいものをマネしたい ほめられてうれしい

まずは各グループとも、クラスに戻って、自分たちの発表内容の確認と練習だ。グループ内で相談し、発表時の注意点などを、それぞれ受け持つページのプリントの裏にまとめていく。

グループごとの発表は、子どもたちの全員参加で進められていった。子どもたちは2名ペアで1ページずつを担当。8名からなるグループは、それで4ページの作品を作っている。発表もそれぞれの子どもが受け持つ。

グループごとに、発表開始!

それでも、低学年ゆえに、集中力の維持はなかなか大変だ。2組担任の安村真美先生やTTの比嘉先生も、休みなく各グループの輪に入っては、子どもたちに声をかけ続けている。

「今の発表、どうだった?」「どんなところがよかったかな?」
「公園ができた理由とか、私たちが知らなかったことが分かってよかったです」
「はっぴょうの話し方がおもしろかったです」

こうして、子どもたちは他の子のいいところに気づき、それをマネしたいと思う気持ちや、他の子に、自分でも気づかなかったいいところをほめられてうれしいと感じる気持ちを積み重ねていく。そのせいか、授業の終盤では、むしろ集中力が高まって目を輝かせている子どもが目に付いたのが印象的だった。

来るJAET沖縄大会では、こうした実践を積んだ子どもたちが、「小さい頃のこと知りたいな」というテーマで、1人ひとり発表する形の公開授業に挑む予定だ。

子どもたちの作品 子どもたちの作品 子どもたちの作品 子どもたちの作品

工夫がいっぱいの子どもたちの作品。取材に協力していただいた方へのお礼も忘れていない。

 

教員が一丸になって進める全校的な情報教育

前田泰宏校長先生

高江洲小学校では、分け隔てなく充実した情報教育を行うために、全教員が意識を高めて指導に取り組んでいる。ITに関心の高い一部の教員だけが突出するのではなく、常に意見や情報を交換し、学校として前に進んでいくという意識は、職員室にもみなぎっているように感じられた。そこには、校舎全体へのLAN敷設などインフラ構築にも率先して汗を流し、教員の疑問にも自分で答えていこうとする校長先生の存在も大きいようだ。

「生活科や総合的な学習の時間などの地域に根ざした調べ学習などを通して、子どもたちは、自分たちの住んでいる地域に目を向け、地域の良さを再発見したり、課題を見つけたりします。そして課題解決に向けて考え、行動する中で、自分の地域を大切にする気持ちが子どもの自信につながり、「生きる力」の育成につながるのではないかと考えています」
と話す前田校長先生。

 

高安先生 安村先生 比嘉先生

調べたことや考えたことをまとめたり、まとめたことや自分の考えを効果的に伝えるために、情報機器の活用は有効だ。
しかし、単純に情報機器の操作を身につけるだけでなく、自分の考えを相手に伝えるこためには、言葉の表現力も高めることが大切だと実感したことが、各学級での「読み聞かせ」や全校一斉の「ことば朝会」の取組につながっている。

「教育行政の苦しい予算の中で、こうした新しい取り組みを行っていく上では、苦労も少なくありません。それでも、遅い時間まで、新しい授業の準備や取り組みを苦にせず頑張っている先生方を見ると、私も頑張ろう、と思えてくるのですよ」

にこやかに話す前田校長と、明るく頷く高安先生、安村先生、そしてTTの比嘉先生の表情が、取材を終えた私たちを見送ってくれた。

「みんなではっぴょう、できた!」
◆具志川市立高江洲小学校

大正12年創立。今年で創立90周年を迎える歴史ある小学校だ。平成13年度に「学校インターネット3」実践研究協力校に指定され、積極的な情報教育の実践に取り組んでいる。教育の基本方針は、他人や自分を大切にする心豊かで思いやりのある子どもの育成にある。児童数423名。

取材・文/西尾琢郎 撮影/小橋川哲
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。