小学校の実践事例

公民館での調べ学習をテーマにした低学年でのプレゼン体験 
〜うれしい気持ち、やさしい気持ちを活かした教育〜
沖縄県・具志川市立高江洲小学校

小学校低学年での情報教育は、キーボード入力などのスキル面に費やされがちだ。そんな中、ここ高江洲小学校では、2年生で調べ学習とプレゼン資料作成・発表を組み合わせた授業に取り組んでいる。その教室に取材に伺った。

授業開始! 声を出して目標を体に取り込む

広々とした開放型の教室

高江洲小学校は、一部の学年を除き、1学年が2学級からなる構成で、それぞれの教室は廊下との仕切りがないオープン構造だ。そして、それぞれの学年の2学級の教室前に広がるオープンスペースは「ひろば」と呼ばれ、習字や図画などの掲示や共同学習のための場所として活用されている。沖縄県の公立学校では、こうした構造を持つ校舎がむしろ多いのだという。

学年あたり10台前後が割り当てられたパソコンも、この「ひろば」に設置されており、今回の授業は2年生の2学級が、そのひろばで共同学習として実施した。

見慣れない取材スタッフを前にして、少し緊張気味の子どもたちに、2年1組担任の高安純子先生は、緊張を解く声かけからスタートした。
「さぁ、今日はみんなの一番いい顔を見てもらおうね。楽しく勉強していきましょう」
「はい!」

すぐさま子どもたちの表情が和らぐ。先生の言葉に、いつものペースを取り戻してきたようだ。

 

授業の目標をみんなで音読

子どもたちの前には、大きな文字で書かれた授業の目標が張り出されており、これを声を揃えて元気に音読する。低学年の児童にも、しっかりと自分の目標をつかませる指導だ。

今日の授業のテーマは「こうみんかんたんけんはっぴょう」。校区の中でさらに分かれた地域(子ども会)ごとに子どもたちをグループ分けして取り組む。

すでに今日までの授業で、あらかじめまとめた疑問点をそれぞれの地域の公民館の人に取材済み。また、質問とその回答は、先生が『はっぴょう名人』を使って作成したテンプレートに入力してプレゼンシートを作成してある。今日はその発表に取り組んでいく。

子どもたちは、すでに以前の授業で、「あったらいいなこんな道具」というテーマで、自由に想像した便利な道具などについて、絵入りの資料をパソコンでまとめ、発表することを体験済み。今回の授業は、さらにグループ発表の体験を積み、パソコンに慣れることが目標だ。

自然な気持ちを出発点にしたルール理解

今日の発表は、学級全体に向けたものではなく、1組と2組の、それぞれ同じ校区のグループに向けた、いわばプレビューのようなもの。その中で、お互いのいいところを吸収し合って、シートを作り直したり、発表の仕方を考えたりする「気づき」を目標にした授業となる。

先生の話にじっと耳を傾ける

絵や写真の使い方や文字装飾など、低学年には少し難しいかな、と思えるようなポイントについても、先生の指導はとてもやさしい。

「この間、「あったらいいな〜こんな道具」という発表をやったよね。あのときの説明にドラえもんの絵が出てきたら、それは絵と内容が関係……あるよね? じゃ、そこにルフィーの絵が出てきたらどうかな?」
「関係ない〜!」「おかしいと思います」

すかさず反応する子どもたち。子どもたちにとって身近なテレビアニメのキャラクターを例にとって、プレゼンに使用する絵柄と説明する内容との関係とを無理なく理解させてしまった。

さらに発表練習の開始に先立って、高安先生からこんな問いかけがあった。
「ねぇみんな、先生、ある子がすごくいい作品作ってるのを見たの。欲しいなーと思ったんだけど、これ、勝手に持って来ちゃっていい?」
「だめ!」と子どもたち。

「どうして? すごくよくできてるんだよ。持ってきたら自分のもすごくよくなりそうなんだよ?」
「ちゃんと相談する」 「話し合う」
口々に答える子、ちょっと迷ってしまう子。

みんな真剣なまなざし…

そこで先生は、こんな風に言って聞かせる。
「たとえばね、A君がすごくいいのを作っているのを見て、B君がそれを勝手に自分で使ってしまったとするよね。それをB君が先生のところに持ってきて、ほめられてるのを見たら、A君どんな気持ちかな?」
「いやだと思う」

「そうだね。いやだよね。でもね、B君が、ちゃんとA君に「これいいね。僕もやってみたいんだけど、やり方教えてくれる?」って、ちゃんと相談して、それで上手に作れたのを先生に見せてくれるときには「これ、A君から教わったんだよ」って言ってくれたら、先生、B君もA君もほめられるよね。ほめられる人が2倍になるんだよ。これって、いいよね?」
「うん」「いい!」
「それじゃ、みんなで発表練習、始めてみようね」

紋切り型のルールを押しつけるのではなく、子どもたちの気持ちから自然にルールが生まれていくのだ。