小学校の実践事例
「情報教育交流会」を通じて学生の「プロ意識」を高める
〜情報教育の現場と連携した教員養成〜
山形県・山形大学教育学部
附属小学校に「情報教育アドバイザー」として学生を派遣し、子どもたちの手助けをする「情報教育交流会」という試みを、平成12年度より始めた山形大学教育学部。
学校教育教員養成課程学校教育コース・情報教育専攻の学生たちは、自らがパソコンを「指導する」立場を経験することで、教職への自信を深めていく。
子どもにパソコンを指導できる人材を育てる
「ローマ字入力とカナ入力を切り替える方法は覚えていますか?」
一瞬考える学生たちの手元を覗き込みながら、ATOKパレットの操作方法をおさらいする佐々木教授。
現在、日本の教育現場において、パソコンをきちんと子どもに指導できる人材は、残念ながらまだまだ少ない。
山形大学教育学部・学校教育教員養成課程学校教育コースでは、そんな現状を打開すべく、しっかりとパソコンに対する基礎を固め、情報教育を引っ張っていける人材を養成すべく、平成11年に「情報教育専攻」を設置した。
情報教育専攻の学生たちは、入学と同時に1人1台のノートパソコンを貸与され、そのパソコンを好きにカスタマイズでき、また、自宅に持ち帰ることも許されているのだという。
「Altは『アルト』ではなく『オルト』です。では、何の略でしょう」
すかさず「alternate」という答えが学生から返る。講義の合間にも、パソコンの基礎が理解できているか否か、それを試すような質問が時折顔を覗かせる。
学生が「先生」と呼ばれる「情報教育交流会」
大学の再編・統合が一般的なニュースとして取り上げられる中、各地域で教育学部のあり方が議論されている。佐々木教授は、地域に根ざし、現場と密着した教員養成の重要性を唱え、実践している一人だ。
学生たちは年に数回、山形大学教育学部附属小学校に「情報教育アドバイザー」、すなわちパソコンに関するプロフェッショナルとして派遣され、情報教育の現場で子どもたちの手助けをしている。附属小学校と連携し、その附属小でも導入されている『ジャストスマイル』を使った実践を、未来の教員たちに学ばせているのである。
その場である「情報教育交流会」では、学生たちは子どもたちに「専門家」として紹介され、「先生」と呼ばれる。
「『専門家』として子どもたちの前に立つこと、そして『先生』と呼ばれること、それが学生たちに良いプレッシャーを与える」と語る佐々木教授。
子どもたちの質問に答えることができ、問題を解決できれば、それは大きな自信につながる。
しかし、たとえ質問に答えることができなくても、理解の足りない部分、苦手な部分を再認識することができ、さらなる学習につながるのだという。
「自力で解決できない問題ならば、その問題が得意な他の『先生』の助力を請えばいいのです。学生たちには、恥をかくことで、自ら学ぶ力をつけてもらいたい」
この「情報教育交流会」により、学生は1年生のうちから、実際の教育の現場で子どもたちと接し、大学の講義だけでは学ぶことのできない、様々なことを学び取ることができるのだ。