小学校の実践事例
プレゼンソフトと大判プリンタを利用し 短時間で質の高い作品づくりを実現
〜『はっぴょう名人』で卒業生へのメッセージを作成する総合的な学習の時間〜
徳島県・池田町立池田小学校
早くからIT化を進めた池田町 昨夏には先生のパソコン1人1台も達成
1995年、「教育用コンピュータの新整備計画」がスタートして間もないころから、池田町教育委員会では町内小学校11校でのネットワーク化を検討していた。そして翌年、池田小学校が「先進的教育用ネットワークモデル事業」へ参加。さらに99年2月に政府が導入した補正予算、同年10月に設立された三好郡教育ネットワークセンターからのインターネットへの常時接続環境実現によって、池田町の校内LAN導入は一気に加速した。
池田町教育委員会の武川修士さんは、これまでの取り組みをこう振り返る。
「8年前に赴任したとき、池田町のほとんどの学校では、機材が箱に入ったままでした。しかし、山の中に建つある学校で、先生の1人がパソコン通信を子どもたちに使わせていた。子どもたちがコンピュータを使って元気に交流しているのを見たとき、田舎でも都会に負けない活動ができると確信しました。池田高校野球部の名物監督であった故・蔦文也さんは『山あいの子供たちに一度でいいから大海を見せたかったんじゃ』と言われましたが、それをコンピュータとネットワークの利用によって実現できると思ったのです」
町長のITに対する深い理解もあり、町内全域に光ファイバー網が整備されるなどインフラ面も充実。昨年夏には教員の1人1台パソコンを実現した。
また、三好郡教育ネットワークセンターのICTコーディネータとして中川先生と生藤元先生が赴任。町内の学校におけるIT化の“頭脳”となることはもちろんのこと、僻地の学校へ自ら校内LANの敷設に訪れるなど、ときには“手足”にもなって活躍。2人を中心に全国でもトップクラスのネットワークが実現した。
現在、教育委員会と各学校のやりとりの多くはネットを介して行われている。
連絡事項はメールや掲示板を利用。また、中川先生と生藤先生は、各学校を回って研修会を行ってきた。知識や技術をフィードバックすることで、先生たちのスキルも上がったのだ。
武川さんは、
「各学校との連絡は、非常に効率がよくなりました。今後はさらにグループウェアの活用を進め、ペーパレス化を実現したいと考えています。また、多くの学校で職員会議が大幅に減りました。面と向かっての会議と、掲示板をうまく使い分けることで、より密度の高いコミュニケーションを実現しているようです。授業へのIT利用に関しても日本でトップクラスのレベルだと自負しています」
と胸を張る。
校内LANをフル活用 先進的な取り組みを続ける池田小学校
そして、その中心的存在となってきたのが池田小学校だ。新たなシステムや制度を導入する際には、常に池田小学校を実験台にしてきた。ここで培われたノウハウを、各学校に広げていく形で、全町的なネットワークの高度化を進めていったのだ。
実際、池田小学校は校内LANをフル活用している。
子どもたちも見ることのできる教師用掲示板には、常に連絡事項や質問、それに対する回答が書き込まれ、連絡業務の効率化が図られていることが分かる。パソコン室にはネットワークカメラが設置され、イントラネットの画面を開けば、校内のどこからでも利用状況を確認することができるのも便利だ。
また、学校のホームページには、写真とともに毎日の出来事を紹介する「行事ニュース」があるが、中川先生は、
「画像掲示板を利用することで、誰でも簡単に写真データを貼り付けることができる仕組みを作っています。多くの先生に利用してもらえるシステムを構築することが、頻繁な更新につながっているのです」
と使いやすさを追求することが、校内LANの利用促進につながると説明する。
授業へのIT利用についても積極的。全教室にパソコンが設置されているので、例えば音楽の教材となる楽曲は、従来、テープにダビングして配布していたが、今ではMIDIデータ化されているので、どの教室からでも瞬時に取り出すことができるのだ。
今回、卒業生へのメッセージを作成する授業では、子どもたちが特に指示を受けなくても、着々とパソコンでの作業を進める姿に驚かされた。また、ソフトの操作方法を習熟する早さ、完成した作品のクオリティの高さも、一歩先を行くレベルである。
そうした子どもたちのIT活用能力の高さを支えるのは、十分に整備された環境だ。そして、その恵まれた環境を、校務処理や授業に積極的に活用している先生たちの意識と技術の高さにほかならない。
四国のほぼ中央部に位置し、古くから交通の要衝として発達してきた池田町。池田小学校は幼・小・中・高と連なる学園の丘に位置し、恵まれた自然環境のなかにある。郡内一の大規模校で、行事の会場となることも多く他校との交流が盛ん。また、池田町の教育情報化の中心的存在でもある。児童数410名。