小学校の実践事例
身近な題材を通じて環境を考える 教室を飛び出したアクティブな学習
〜『一太郎スマイル』で大山川調査の報告書を作成する総合的な学習の時間〜
愛知県小牧市立篠岡小学校
初めて触れるスキャナに興味津々 多くのグループが積極的にチャレンジ
「今日は、写真の貼り付けのほかに、もうひとつ新しいことに挑戦するよ」と、丹羽先生が注目を促す。
「デジカメではなく普通のカメラで撮った写真や、資料に載っている図を使いたいときは、スキャナを使います」
カラーレーザープリンタ『LP-8300C』にカラーコピー機能を備えて一体型にした、エプソンのネットワークスキャナ『ES-8500』の前に先生が立つと、「それ、コピーだよ」と子どもたち。
「コピーもできるけど、紙じゃなくて、コンピュータに入れることができます。操作はコピーの仕方と似ています。資料をここに置いてスタートボタンを押せばOKだよ」
丹羽先生は虫の写真が載っている資料をスキャナにセットしスタートボタンを押すと、先生機のパソコンに戻り、スクリーンを使って説明を続ける。「[スキャン箱]をクリックして、画像を選びます」
すると、スキャンした虫の写真が画面に登場した。
「うわー」子どもたちからは驚きの声。
『スマイルペイント』のツールボックスには[スキャン箱]のアイコンがあり、スキャナと連動しているので、画像の取り込みがスムーズにできるのだ。
ここで先生は、
「ひとつ、注意することがあります。“著作権”というものがあって、資料や本に載っている画像や図を勝手に使ってはいけません。自分たちだけだったらいいけど、インターネットに掲載するときは、最初に作った人に『使っていいですか?』って聞かないとダメなんだ」
と著作権に関して触れる。
「どうやって聞くの?」
子どもからの質問に対しては、
「先生がさっきスキャンした虫の資料は、学校の環境部が作ったものだから、環境部の人に聞けばいいよね」と答える。
篠岡小学校では5・6年次の総合的な学習の時間に、著作権やセキュリティなど情報リテラシーに関して学習するカリキュラムが組まれている。4年生までは、授業の中で随時取り上げているとのことだ。
スキャナの説明が終わると、子どもたちが資料を手にスキャナの回りに続々と集まってくる。初めての機材にも積極的にチャレンジしていた。
授業も終わりに近づいた頃、報告書が完成したグループはプリントに取りかかる。先ほど上段のネットワークスキャナ部分を使用したが、今度はカラーレーザープリンタ『LP-8300C』が、作品出力に活躍。子どもたちはプリントした作品を囲んで、
「写真が大きくて文字が少ないよ。もっと説明する文章を入れたほうが分かりやすいと思う」
「ここは文字が抜けているよ。文章に点がないから読みにくいね」
と、お互いに意見を交換していた。
子どもたちの可能性を広げるための情報教育を目指す
丹羽先生は情報教育において、日頃から“相手の立場で考えて”ということを子どもたちに意識させる。例えば、遠足の作文を書く場合、「遠足にいっしょに行かなかった、お父さんやお母さん、兄弟に分かるように書いてごらん」とヒントを与えることで、子どもたちは伝える相手を意識し、どうすれば伝わるかを考えるのだという。
今回作成した報告書はインターネットで公開するほか、3学期に保護者を招いて開かれる発表会の資料にもなる。
たくさんの人に伝えることを考えた子どもたちは、それぞれに工夫を凝らし、表現のしかたや伝える方法を選択していたようだ。
また、丹羽先生は、
「コンピュータを使って制作することで、ホームページへの掲載や、ポスターセッション、プレゼンテーションソフトを使った発表など、さまざまに加工でき、活用の幅が広がります」
と、一度デジタルで制作すれば、その場に応じた表現形式を容易に選択することができる点を評価する。
そのうえで、「もっとも、実際に自分の手を使って書いた作品が持つ説得力も大切です。子どもたちには、発表ツールの特性を理解して、自由に選べるようになってほしい」と言う。そのためにはコンピュータスキルの向上も欠かせないのだ。
丹羽先生は2002年までの3年間、情報学習のチームティーチングを担当。子どもたちはもちろん、先生たちのスキルアップに努めた。
「段階を踏んで、継続的にコンピュータに触れることで成果が出せたと思います。新しいソフトや機材を導入しても、すぐに使えるようになってきました。コンピュータを感覚的に操作できるセンスが身に付いたようです」
確かに、今回初めて使用したスキャナや写真画像の取り込み作業に対して、子どもたちが積極的に取り組んでいた姿が印象的だった。
また、丹羽先生はインターネットを利用した学習交流にも力を入れている。
「時間や空間を越えて、教室が広がっていく。いろんな人と出会うことができ、いろんな事が学べる。そんな時間をたくさん作っていきたい」と、熱く語ってくれた。
地元企業の関係で、外国人児童の割合が比較的多く、ホームページでは学校の情報の一部を4カ国語で掲載。保護者や篠岡小学校の教育活動に携わる人たちのコミュニケーションの場として、メーリングリストの活用を目指している。また、縦割りクラスで行動する交流給食や集団登校などの活動も盛ん。児童数533名。