中学・高校の実践事例
基礎学習と実践を土台にした実りある表現を目指して
〜体験が肉付け、道具が伸ばす、好奇心と可能性〜
青森県・八戸市立白銀中学校
絶えず軌道修正を
「はっぴょう名人Teen's」は、作業の流れに沿ったメニュー構成で、生徒たちにも迷いは少ないと話す中嶋先生。しかし、それでも先生の導きは重要だ。
例えば、効果音など特殊効果の使い方は、生徒がそれを使うことに気持ちをとらわれてしまいがちなため、慎重にする必要があるという。
「発表技術そのものの向上を目指す授業などでは別ですが、この理科の授業のように、資料の内容そのものが大切な場合は、あえて使用を禁じることもあります」とのこと。
ただ、そうした効果を使いたいという気持ち自体は、一概に否定すべきものではないともいう。
「生徒たちには意外なほど、他人と違うものを作りたい、という気持ちが強いのです。ですから、今回のテーマ設定でも、もっと同じような植物に偏ってしまうかと思ったのですが杞憂でした。音を使った効果にしても、そういう気持ちの表れだと思えるんですね。ただ、今回については、それを承知の上で、あえて中身に集中してもらうことにしました」と中嶋先生は話してくれた。
生徒たちの作品を見ると、調べによって得られた、農作物の作柄数値などをグラフ化して貼り込んだものや、その作物がその土地で栽培されるに至った経緯を物語り仕立てでまとめたものなど、正に内容と結びついた表現の豊かさが感じられた。これが表現の中身を重視した指導の成果なのだろう。
今回の授業は、こうして、生徒たちが確実に作業を前進させる中で終了の時刻を迎えた。今後は、さらに発表に向けた仕上げの作業が続けられることになる。
白銀中のさまざまな取り組み
授業終了後、中嶋先生と、同校の新井山校長先生にお話を伺った。
これまでの実践の中でユニークなものとしては、なんと家庭科で実践された 「カレーのラベル制作」がある。これは、家庭科の授業で、スパイスの調合により自分たちで作ったオリジナルのカレー粉を瓶詰めにし、そのラベルを制作するというもの。
自分たちなりのこだわりを持って作ったカレー粉の瓶に、その味わいに相応しいラベルを付けようということで、生徒たちのやる気も大いに引き出せたという。
国語科では、チャット機能を使い、コンピュータ室内で、ある文学作品についての意見や感想を交換させ、さらに外部の専門家(その作品についての権威)に、メールで質問を投げかけるという実践を行ったが、このとき、通常の授業の中ではほとんど発言のない生徒から、積極的に意見が出されるといった効果が見られ、驚かされたという。
「パソコンなど情報機器は、あくまで 「道具」ですが、その道具を替えてみることによって引き出されてくる力や感性があるようです。チャットなどでの実践結果は、その一例ですね」と話す中嶋先生。
校長先生からは 「保護者の間でも、学校での情報教育への期待は高まっています。それにお応えする一環として、PTAパソコン教室というものを開講しています」とのご説明をいただいた。
こうした白銀中学の取り組みは、総合教育センターの機能と相まって全市に役立てられていくことだろう。
平成11年度から13年度までの3年間に渡り、八戸市総合教育センターの委託研究校として実践的な情報教育に取り組んできた。現在はその蓄積を活かし、市内での先導的な役割を果たしている。生徒数450名。