中学・高校の実践事例
『はっぴょう名人 Teen's』を活用した「私の将来」プレゼンテーション
〜動機を見失わせない、依存から工夫への導き〜
沖縄県・私立沖縄尚学高校
高機能化するパソコンソフトは、子どもたちの可能性を大きく広げる一方で、知らず知らず、その機能に安易に依存する姿勢を生んでしまう可能性をはらんでいる。
表現の動機を重視し、求める成果に至る道筋を「工夫」によって切り開かせる指導で、単なる切り貼りに終わらないプレゼン資料作りが進められていった。
身逆転の発想 コピー&ペーストを 「禁じ手」に
「この授業では、出発点でコピー&ペーストをさせないようにしてみました」
授業に先立つインタビューの席で、情報教育担当の上野先生は、こう口を開いた。
「今回のテーマは、生徒たちが、自分の将来をイメージし、それについて調べ、さらに考えを深めた上で、プレゼン資料を作成するというものです。すでに先日の授業で、最初に生徒たちがイメージした自分の将来をテキスト化させてあるのですが、それはプリントアウトして回収し、保存はさせませんでした。あらかじめ書いたその文章をコピー&ペーストするだけで資料作りに入っていくことを避けたかったからです」
上野先生の狙いは、生徒たちの 「出発点」を一度パソコンの外に取り出し、同時に生徒たちの中にあった夢を客観的な思考の対象とすることだったのだ。そうすることで、その夢を実現していく上で知らなくてはならないことを調べたり、さらに考えを深めていくことができるというわけだ。プリントされた 「夢の種」は、生徒たちの 「考える種」として、授業の冒頭に改めて手渡された。
受け手の視線から先輩の作例に学んで
1年生の教科情報の時間。 「わたしの将来の夢」をテーマにしたプレゼン作成・発表活動の5時間目だ。
先述のプリントが返却され、生徒たちがそれをどう形にしたものかと考え始めた矢先、先生は、教壇への注目を促した。
「同じテーマでプレゼンを行った先輩たちの作例を、先生が2つほど簡単にまとめてきました。これを見て、どちらがどのようにいいか、悪いかなどを考えてみてください」
参考にする『はっぴょう名人 Teen's』のデータがエプソンのプロジェクター・ELP-7600で投影され始めた。
これから情報の 「作り手」としての体験をしようとする生徒たちだが、まずは先輩の作例を 「受け手」として見つめ、そのよしあしについて感じ、考えることからスタートさせる。これも生徒を、資料の体裁を整えるだけの細道に迷い込ませないための配慮だ。
作例を見終わると、数人の生徒にそれぞれの作例についての感想を求めた後、先生から解説が加えられた。プレゼンとは資料作りのことではなく、それを素材に、自分の言葉を加えて伝えることの全体なのだから 「話せばいいようなことは書かない」 「結論をしっかり伝えた上で、その理由を説明していく」など、明快で印象に残るプレゼンの方法論が簡潔に示される。頷きながら自分の手元のプリントに目をやる生徒の姿もあった。