小学校の実践事例
メモをもとに、作文を書いていこう「ひらめきライター」を活用した作文指導
〜学力の基盤としての文章力を育む〜
大分県・日出町立日出小学校
「城下カレイ」で全国に知られる、まさにその城跡に建つ日出町立日出小学校にお邪魔した。海に面した城壁の上にそびえる校舎からは、別府湾が一望できる。この恵まれた環境の中で、「ひらめきライター」を活用したユニークな作文指導の取り組みが進められていた。その様子をご紹介しよう。
作文指導の難しさ
「作文指導は、学力向上のカギだと思っています」
杉安千津美先生はこう話してくれた。
「どんな科目でも、問題を読んで理解し、それに対する自分の考えをまとめて、答えとして表現するわけですから。作文指導は、すべての基本になると思っているんです」
日出小は、平成14・15年度の大分県「教育課程フロンティアスクール」の指定を受けた研究校として、教育の情報化を実践してきた。杉安先生は研究会の提案授業として、国語科、そして作文指導を選ぶことに迷いはなかったとのことだ。だが、従来の作文指導には非常に困難が多かったと先生は言う。
「作文では推敲の過程がとても大切だと思うんですが、以前は赤字を入れて添削したり、付箋やメモ用紙を並び替えるなどの工夫をしても、つまりは書き直し、ということになって、子どもたちの気持ちの上でもなかなか難しかったんですね」
そこで、杉安先生の作文指導では、『ジャストスマイル2@フレンド』の作文ソフト『ひらめきライター』が活用されることになった。
「思いつくままにメモを書いて、それを組み立てながらまとめて清書に進んでいくというこのソフトの流れは、私にも子どもたちにも、とても理解しやすいものでした。その上、パソコン上での作業ですから、書き直しも苦にならず、むしろ楽しんでいる子どもも多いです。これまで年に2〜、3回できればいい方だった作文指導が、このソフトの導入で7〜8回はできそうです」
そう話す杉安先生。実はご自身もパソコンは決して得意ではないと言いながら、だからこそ自分も理解できるこのソフトを本当に気に入っていると語ってくれた。
ヒントと個別指導が生む自信と体験
いよいよ授業を拝見する時間だ。5年2組の子どもたちは、列を組んでパソコン教室へやってきた。
今日のテーマは、5年生の1年間を振り返って、思い出に残ったことを作文に書くというものだ。杉安先生は、『ひらめきライター』のヒント機能を利用して、あらかじめこの1年間の学校行事など、何月何日に何があったかを子どもたちのパソコン画面に表示させた。
テーマに合わせたヒントファイルを自由に作成できるのは、『ひらめきライター』の大きな特長だが、先生は一歩進んで、子どもたちのレベルに合わせたヒントを2段階用意している。
作文があまり得意でない子向けには、段落作りのヒントになるひな形までを提示するヒントを。そして、自分で書き進めることのできる子は、上記の行事日程のみを見ればOKという具合だ。
ヒントファイルの参照まで問題なく進むと、いよいよ子どもたちは作文に集中しはじめた。今日はこのテーマでの2回目の授業ということもあり、すでにある程度まで書き進めている子もいるようだ。
ヒントを頼りに、思い出を掘り起こしながらメモに書き出していく子どもたち。
時には、学校のホームページに掲載された行事のリポートや写真を見たり、疑問点を検索したり。そうやって書き進めていく様子は、実に手慣れたものだ。ヒントにまとめられた要点について、考え、調べ、まとめて書くという一連の流れが、自然に身に付けられている様子がよく分かった。
一方、作業が進んでいく中で、作文を苦手にしている子どもが書きあぐねている様子が見えてきた。
すると、すぐさま先生がその子の席に向かい、ヒントを手がかりに少しずつ書き進むためのアドバイスと励ましを与えていく。たどたどしいながらも、ひとつの文、ひとつの段落を書き上げるごとに、子どもの表情が満足そうに和らいでいくのがうかがえた。
通常の授業では、クラス全体への目配りに追われて、なかなか一人ひとりの子どもをケアすることが難しかった。しかし、ヒント機能を最大限活用することで、多くの子どもたちが自分で作文を進めていけるようになり、その分、本当に指導を必要とする子どもを十分にケアできるようになったという。もちろん、ヒントを手がかりに自分の力で頑張った子どもたちは、それに見合った満足感を得られるに違いない。
「より多くの子どもたちが、自分なりの達成感を得られるようになったと思います」
先生はそう語ってくれた。