小学校の実践事例

プレゼンソフトを算数に活用 学習の楽しさを引き出して理解を深める
『はっぴょう名人』で「垂直と平行」を探すレポートを作成〜
長崎県・長崎市立土井首小学校

総合学習でスキルを高めているからこそ
一般教科でのパソコン利用が推進できる

お手製カバーをつけたままタッチタイピングもできる!

上村先生は今回の授業の狙いについてこう語る。

「垂直と平行を探すとき、子どもたちの発見だけでは限界があります。パソコンを使うと、子どもたちが気づかないような事例でも、画像によってたくさんパソコン室にいながらにして見せることができ、それによってより多くの気づきを導くことができると考えました」

また、パソコンを利用することで、子どもたちの興味が、いっそうわき出してくることもメリットだという。

「今後、生活のなかで垂直と平行を考えるとき、子どもたちはきっと『パソコンを使ってたくさんの事例を見つけた』、今日の楽しい授業のことを思い出すでしょう。それが数理を追求する楽しさにまで発展していけば最高です。学ぶことの楽しさを感じさせるためにも、コンピュータの利用は有効だと考えています」

土井首小学校では、総合的な学習の時間を利用して、徹底したパソコンスキルの向上に取り組んでいる。 「私より速くタイピングできる子も珍しくありません。ワープロ検定なら1級レベルの子もいるんですよ」
と上村先生は笑顔で語ってくれた。

上村先生

これは、週1時間、年間35時間を、タイピングやフォルダの操作といった基礎的なスキルの開発にあてている成果だ。上村先生はその理由をこう説明する。

「スキル指導に偏重するのは問題ですが、基礎的な知識やスキルがあるからこそ、今日のように操作法についてほとんど解説しなくても授業がスムーズに進められるのです。一般教科でパソコンを利用していくには大切なポイントだと考えています」

上村先生は現在、少人数指導担当として算数の授業を受け持っている。これまで情報教育を担当した経験を活かし、今後も一般教科へのパソコン利用を積極的に推進していく方針だ。

そして、そのかたわら、長崎市教育研究所の情報教育班として、市全体の情報教育発展のためにも活躍している。市内各校の先生たちに対して、ハード・ソフトの操作法から、それらを使った実践の在り方まで、それぞれのニーズに応じた研修会を開くのが主な役割だ。

「市全体の情報教育は確実にレベルアップしていると肌で感じています。パソコンを特別なものと捉えるのではなく、授業を充実させるために必要な道具として、すべての先生が気軽に利用するようになる日も、そう遠くないでしょう」

パソコンのスキル教育と一般教科利用について、明確な方針を持って取り組む土井首小学校。その成果は上村先生たちの活動を通して、長崎市全体に波及していくに違いない。

「垂直と平行、いっぱいあったよ!」
◆長崎市立土井首小学校

明治9年創立、平成18年には創立130周年を迎える。隣接する裏山に鹿が遊びに来ることもあるという豊かな自然のなかで育つ子どもたちは元気いっぱい。教育情報化や少人数指導など、新たな教育の潮流に対する取り組みにも積極的だ。児童数619名。

取材・文/元木哲三 撮影/山田満穂
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。