小学校の実践事例

パソコン利用で広がる世界 たくさんの人に思いを伝える 
〜伝えるためのツールを自ら選択する総合的な学習の時間〜
山形県・八幡町立一條小学校

ひとりひとりの意見を大切に より良い作品を目指す

付箋をもとに修正していく

先ほど教室で発表した3つの班は、みんなが記入した付箋を見ながら、ホームページに修正を加える。

新聞班は「新聞を大きく載せて、ホームページで読めるようにしたらいいと思う」というアドバイスを受けて、さっそく紙面を拡大。
「大きくしたら、全部入らないよ〜」「上の段と下の段を、半分ずつ載せたら?」「それはいい作戦だね」
班で話し合いながら、作業をすすめていく。

一方、紙しばい班は、新聞班のアイデアを活用して、「紙しばいをやりに来てほしい人は、一條小学校に電話を〜」というメッセージを加える。

いずれも、先生に操作方法をたずねる姿はほとんど見られない。子どもたちだけで相談しながら作業をすすめる姿が印象的だ。

今回、発表しなかった子どもたちも、パソコンでの作業に取りかかっている。

こちらでは、新聞と一緒に配る「お願い状」を『一太郎スマイル』で作成中。
「荒瀬川に落ちているゴミのせいで、生き物が死んでしまう〜。私たちが作った新聞を見てください」というメッセージを入力しているところだ。

「お願い状」を作成

荒瀬川の写真を使ってポスターを制作している子どももいる。
「かがやきタイム」の活動の様子をデジカメで撮影した写真は、CD-ROMにまとめてあるので、子どもたちは好きな写真を自由に取り込むことができる。取り込んだ写真を魚の形に切り抜いて、「日本一の川を目指そう」というキャッチフレーズを添えた。
「写真と文字が重なったところが見にくいね」「もう少し写真を小さくして、文字の色も変えようよ」

完成したポスターは、大判プリンタ『PX-7000』を使って、大きなA1サイズでプリントアウト。パソコンの画面では小さく見えたポスターも、大判の用紙に印刷されると迫力満点。プリンタの周囲に集まった子どもたちから拍手が起こった。
「今日の作業はここまで。続きは次回にしましょう」
加藤先生が授業の終わりを告げると、子どもたちはコンピュータルームを後にした。

伝えたい思いがあるからこそ活きてくる “道具”としてのパソコン

大きなポスターができた!

みんなのアドバイスを参考に、子どもたちが作ったホームページをもっといい作品にする今回の授業。
「子どもたち1人1人が意見を出すことで、誰かが作ったホームページではなく、みんなで作った、という意識を持たせようと考えました。パソコンに向かって作業をしていると、みんなの代表でホームページを作っていること、それを見てくれる人がいることを忘れがちです」
と、加藤先生は授業のねらいを語る。

新聞や紙しばいを制作する際にも、みんなで意見を出し合いながら作業を進めてきた。

また、新聞は地域に住む人たち向け、紙しばいは保育園やお年寄り向けと、伝える相手を想像しながら、作品づくりに取り組んだ。
「子どもたちは、『保育園に行って紙しばいを披露したい!』とはりきっているんですよ」
加藤先生の顔に微笑みが浮かぶ。

1年間の「かがやきタイム」のなかで、子どもたちは積極的に地域の人たちと接している。インターネットや本では荒瀬川の情報を十分に得ることができなかった子どもたちは、調べたいことをアンケートにまとめて地域の人たちに配付し、荒瀬川の情報を集めた。

 

加藤ひとみ先生

加藤先生は、
「子どもたちは『アンケートなんて答えてもらえないと思う』と言っていたのですが、たくさんの回答が寄せられて、とても喜んでいました。そのこともあって、地域の人たちに作品を見て欲しいという気持ちが強いのだと思います」
と語る。普段、発表することが苦手な子どもも、「自分たちで作った紙しばいだから、自分で読みに行く!」と積極的。
自らの力で作り上げた作品に対する愛着と自信を持つことができたようだ。

阿部積先生

また、阿部先生は、
「今回の4年生は、『自分の思いを広めたい』という気持ちを抱いたときに、さまざまな表現手段を考えました。そのなかから、伝えたい対象が誰なのかによってパソコンという“道具”を選択したのです。これは、パソコンに対する理想的な接し方だと思います」
と、子どもたちの世界を広げるためのパソコン利用に、期待を寄せる。

ふるさとを流れる荒瀬川から、多くのことを学んだ子どもたち。

作品に込めた思いは、きっとたくさんの人の心に届くことだろう。

 

「荒瀬川をきれいにしようよ!」
◆八幡町立一條小学校

東北の米どころである庄内平野に位置。天気がいい日は出羽富士と称される鳥海山が凛とした姿を見せる。ホームページは、今回取材した4年生による作品をはじめ、行事紹介や子どもたちの学習の記録、植物図鑑など充実のコンテンツ。メールでテレビ会議の交流校を募集している。児童数119名。

取材・文/マロニー 撮影/片桐圭
※本文中の情報は、すべて取材時のものです。