小学校の実践事例
教えることで自らの成長につなげる 縦割りクラスを活かしたパソコンの時間
〜1年生の初めてのパソコン授業を6年生が上手にサポート〜
千葉県野田市立福田第二小学校
全校児童79名、1学年が7〜17人の福田第二小学校。今回は、入学してまだ2ヵ月の1年生に、6年生がパソコンの操作を教える、縦割りの授業におじゃました。1年生ひとりひとりに指導が行き届くと同時に、6年生にとってもメリットがあるという。45分間の限られた時間に、いったいどんな作品ができあがるのか。
パソコンを使った初めての作品づくりに子どもたちは大はしゃぎ
福田第二小学校は児童数79名という小規模な学校。 縦割り授業も盛んに行われていて、新しく入学してきた1年生にパソコンを教えるのは、上級生の役目だ。
今回は、1年生の生活科と6年生の総合的な学習の時間を組み合わせたパソコンの時間。1年生13人と6年生16人が2〜3人のグループに分かれて、パソコンの前に座っている。
1年生がパソコンにふれるのは今日が2回目となる。前回はパソコンに親しむことを目標に、電源の入れ方、終了の仕方をはじめ、マウスのクリックやドラッグ&ドロップなどの基本操作を6年生が教えた。モグラたたきや神経衰弱などのゲームソフトを使ったところ、すぐに興味を示して夢中になっていたという。
前回の授業がよほど楽しかったらしく、パソコンを前に1年生はちょっと興奮気味。パソコンを早く使いたいのか、ソワソワしている。 「は−い、それでは先生の方におへそをむけて、お話を聞いてください」担当の矢部義顕先生が声をかける。
「この前は、ゲームをやりましたね。今日は、『ー太郎スマイル』というソフトを使ってお絵かきをします!」
1年生の子どもたちは大喜びだ。
授業の始めに、ホワイトボードに映した画面を使って、矢部先生が説明をする。先生が操作を始めると、子どもたちは食い入るように画面を見つめ、ぐっと集中した。
『一太郎スマイル』を開いて、学年と組を入力すると、画面にあるタマゴの絵からヒヨコが生まれる。そのヒヨコをクリックすると、[ワープロ][シール][キーボード練習]などのアイコンが並ぶ。アイコンは動物や虫のイラストになっていて、子どもたちが取っ付きやすいように工夫されている。そのなかから[お絵かき]をクリックすると、白い画面とお絵かき用のツールバーが出てくる。
「こんなことができます」 矢部先生が、スタンプを押したり、図形を書いたりしてみせる。子どもたちは興味津々だ。
「ここからは6年生に教えてもらいましょう。あんまり早いと1年生はついていけないから、ゆっくり教えてあげてくださいね。絵が描けたらプリントします。それじゃ、スタート!」
6年生がリーダーシップを発揮 指導はしっかり、ときにはなだめながら
待ってましたとばかりに、子どもたちはマウスに手を伸ばした。「ダブルクリックして、[お絵かき]を開いて」と、6年生がパソコンの画面を指差しながらリードする。「ダブルクリックってなに?」と1年生からの質問に「2回、カチャカチャってやるんだよ」と答える。
まずは[スタンプ]に挑戦。動物や植物をはじめ、人の顔や星座などのイラストや写真が、バリエーション豊かにそろっている。なかでも、ブタのイラストが人気で、「ブタさん大集合! ブー、ブー、ブー」と、楽しそう。クリックするだけでイラストが出てくるので、それらを組み合わせて、簡単にオリジナル作品を作ることができる。
しばらくは、単純にスタンプを押すことに夢中になっていて、先生も絵を描くという段階までいけるかどうか、不安げに見守っていた。しかし、時間が経つと、子どもたちはいろんなツールに興味を持ち始めた。
あるグループは、[手書き]のツールにチャレンジしている。1年生の小さな手には、マウスはとても大きい。一生懸命にマウスを握って、慎重に動かしていく。6年生が「なにを描いてるの?」とたずねると、「迷路だよ」と、1年生。「行き止まりも作っちゃおうよ」とアイデアを出す。
ひとつのグループが新しいツールを使い始めると、「私もあれやってみたい!」と、隣の1年生が興味を示して、それが広がっていく。
こちらのグループでは、「みゆきちゃんみたいに描きたいよ〜」と、まだまだ甘えん坊の1年生がべそをかいている。クリックしているうちに、手が動いてしまってうまくできないようだ。それでも6年生は落ち着いたもの。「大丈夫、こうやればいいんだよ」と、やさしく手を添える。
最初は何をかいているのか分からなかったそれぞれの画面に、次第に絵ができできた。スプレーで地面をグレーに、空の部分を水色に塗って、スタンプの車や飛行機を散りばめたり、テンプレートに入っている犬の写真にフレームをつけたり、かわいらしい作品に仕上げていく。
「名前を入れようよ」と、6年生が提案した。キーボードを打つのは1年生にはまだ難しいが、[スタンプ]のなかのひらがなを使えば簡単だ。