小学校の実践事例
“指導の三原則”&ツボを押さえた教え方 自主性を重視したパソコンへの取り組み
〜文集作りにチャレンジする6年生と明るく意欲的な先生たち〜
埼玉県熊谷市立籠原小学校
市をあげて情報教育に力を入れている熊谷市。今回は、その現場の先頭に立って奮闘する籠原小学校・関根先生の国語の授業におじゃました。友達や学校行事など、小学校での思い出を綴って写真を添えていく、6年3組の卒業文集作り。関根先生のツボを押さえた教え方はもちろん、全員パソコンが使えるという籠原小学校の先生たちにもスポットをあててみた。
デジカメ撮影のコツを写真撮影班に伝授
卒業式を11日後にひかえたこの日、6年3組の子どもたちは、「一枚の写真」という国語の単元のまとめとして、パソコンを使った写真付きの文集作りに取り組んだ。
デジカメで写真を撮影する写真撮影班と、下書きした文章をパソコンに入力をする文章入力班の2グループに分かれて授業はスタート。
担任の関根達郎先生は、まず写真撮影班に、デジカメ撮影のコツを伝授する。スクリーンに実際の写真を投影しながら、「校舎を写すときは全体が入るように遠くから撮ったほうがいいよ」「写真に付けるタイトルや写真の意味を考えながらね」と、上手な撮影方法をアドバイス。先生の話に耳を傾けていた写真撮影班の面々は、しっかりうなずいてから、校舎内や校庭へと繰り出していく。
男女1台ずつわたされたデジタルカメラを手に、「ハーイ、撮るよ。1、2、3!」 友達のジャンプした瞬間を狙おうとタイミングをはかるカメラマン役の子。彼の頭には、この写真に付けるタイトルが浮かんでいるに違いない。そのほか、校舎の外階段の踊り場でポーズをとる子、体育倉庫から出したバットを握る子…。先生のアドバイスを参考にしながら、思い思いの場所で順番に写真を撮り合い、6年間の思い出の一片をカメラの中におさめていく。
プロのアドバイスを生かした誌面作り
一方、コンピュータ室の文章入力班は、各自がフロッピーに保存していたファイルを開き、事前に原稿用紙に下書きしていた文章を『一太郎スマイル』のワープロにローマ字入力で入力開始。
ある女の子は、「一度だけ学校に行きたくなくなったことがあり、自分でもどうしていいかわかりませんでした。でも『待ってるからね』という友達の励ましが、私に勇気を与えてくれました」と入力。また、ある男の子は、「6年生の1学期はローマ字入力が苦手で、コンピュータの時間が楽しくありませんでした。でも、2学期になって『一太郎スマイル』の「キーボードファイターU」で練習をしたら、だんだん上達してきました。2カ月で1分間に48回打てるようになり、自信がつきました」勉強しているうちに、パソコンが楽しくなってきたようだ。
今回の文集作りでの決まりごとは、写真を使うこと、写真と文章を関連づけることの2点。特別な指定はないものの、子どもたちは自然にワープロの[縦書き]機能を選び、黒い文字で書き進めている。普通なら、色を変えたり飾りを付けたり、したがるところだが…。
「修学旅行のレポートを作成したときに、色を使いすぎたり、飾りが多かったりしたんですよ。そこで、地元のタウン誌編集者に、読みやすい紙面作りについてのレクチャーと、6年生全員の作品批評をしてもらいました」と関根先生が説明してくれた。身近なプロから教えてもらったことが、子どもたちにとってよい刺激になったらしい。
大事なところだけ色を変える、タイトルは大きくして飾り文字は多用しないなどのノウハウ、つまり、機能を使いこなすツボを得たことが、今回の文集作りに生かされた。
子どもたちで教え合うのが基本 自主性を重視した“指導の三原則”
子どもたちが文集作りで使っているパソコンが導入されたのは、2001年9月。加えてこの頃、『一太郎スマイル』が導入され、授業でパソコンを活用する機会がぐんと増えた。そしてわずか数カ月で、6年生は入力・保存・文字や、写真の編集・インターネットなどの基本操作をマスターしたという。
しかし、関根先生は子どもたちに、ソフトについてほとんど教えていない。子どもたちがどんどん使って覚えていったからだ。一通りの操作説明はするものの、子どもたちで教え合うのが基本。自主性を重視し、手助けをするのは、フリーズなどのトラブルのときだけだ。なかには、先生の知らない機能まで、いつの間にか知っている子もいるとか。
ここで、関根先生にパソコン指導の方針を聞いてみた。
一.マニュアルは見ない
二.メモを取らない
三.わかった人が先生になる
この“指導の三原則”は、子どもだけでなく、先生にパソコンを教えるときも同じだという。
6年2組の井田由美子先生は、「メモを取らないから聞く方は必死なんですよ。3回、口で繰り返して体で覚えるんです」そんな井田先生も、今では、自分のデジカメで撮った写真を使ってパソコンで学級通信を作成している。