小学校の実践事例
低学年からパソコンに触れてきた6年生 自由な新聞作りを卒業の思い出に
〜『一太郎スマイル』を使って、12年間をふりかえる“自分新聞”を制作〜
香川県高松市立屋島小学校
ネットワークスキャナが大活躍 !自分で選んだツールで紙面を構成
地域の野球チーム「屋島スポーツ少年団」でがんばった男の子は、試合で韓国に行ったときのことを記事にまとめている。ちょうど、記念に撮った写真や、韓国でもらったパンフレットを、エプソンのネットワークスキャナ『ES-9000H』を使用してスキャンするところだ。
まず、スキャナに写真やパンフレットを並べる。「ふたを閉めて」と先生。スキャンすると、パソコンのスクリーンに画像が出てきた。画面を見ながら、逆さまになっている写真の向きを変え、“夏の大会”というタイトルを付けて保存。保存先のフォルダには、子どもたちの名前が付いている。
今回使用した『ES-9000H』は、パソコンとスキャナを1対1でつなぐローカル接続と違って、1台のスキャナとみんなのパソコンを接続することができるネットワークスキャナだ。スキャナが先生機だけに接続されている場合、すべてのスキャンを先生機で行うことになり、時間もかかってしまう。その点、ネットワークスキャナなら、接続したどのパソコンからもスキャンできて、とっても便利だ。
なかには、手描きのイラストをスキャナで取り込んでレイアウトしている女の子もいる。イラストの取り込みも、写真をスキャンする場合と、手順は同じだ。彼女の新聞のタイトルは“パラダイス新聞”。思い出に残るシーンを、写真ではなくイラストで…。どうして手描きなのかたずねてみると、「マンガが大好きだから。写真やテンプレートに入っているイラストよりも、自分で描いた方がおもしろいかなと思って」と、笑顔で答えてくれた。イラストは1コママンガになっている。文章よりも、得意なイラストで表現することを選択したというわけだ。
絵が苦手な子どもにも、イラストのテンプレートが豊富に揃っている『一太郎スマイル』なら、簡単にイラストを使うことができる。特に、かわいいものが好きな女の子たちは、花・星・動物などを紙面に散りばめて、満足そうだ。
しかし、なかには、マウスを手にスクリーンとにらめっこしている子どもがいる。その表情は真剣そのもの。見てみると、“部・活・動”という文字をマウスで描いているところだった。アイコンの[線を引く]をクリックすれば、フリーハンドで絵や文字を描くことができる。マウスで文字を描くのは、微妙な動作が要求されるため、大人でもなかなか難しい。何度も失敗しながら、ようやく“部・活・動”の3文字を描くことができた。
さらに彼女は、文字を円で囲んで飾り付けを始めた。[図をかく]をクリックして、それぞれの文字に合った大きさの円を作成。あとは好きな色をつけて完成だ。
このように、子どもたちは、写真やイラストを入れるという作業ひとつをとってみても、テンプレートを使ったり、オリジナルで作成したりと、自分に合ったツールを選んでいる。単に操作方法を覚えているというだけではなく、パソコンの機能を理解しているからこそ“自分がイメージしているものを具現化するには、どの機能が適しているか”を選択できるのだ。
B4で紙面をチェック! 仕上げは大判プリントで
「先生、できたよ!」教室のあちらこちらから、子どもたちの声があがる。「よし、プリントしてみよう」。
まずは、エプソンの『LP-8300CCH』を使って、B4サイズにプリントしてみる。この機種は、前述のネットワークスキャナと、カラーレーザープリンタ、さらにカラーコピーの機能も一体となったすぐれものだ。B4のプリントにはカラーレーザープリンタ『LP-8300C』の機能を使用。スキャナと同じくネットワーク接続ができるため、20台あるどのパソコンからでもプリントができる。仮に、いっせいにプリントの指示をしても、次々とスムーズにプリントしてくれるから快適だ。
プリントアウトした作品を見ながら、文字の大きさや間隔などをチェック。バランスが悪くて読みにくいところがあれば、修正を加える。
色のチェックも欠かせない。空手を習っている子どもが、試合でメダルをとってうれしかったことを記事にしている。記事の隣にメダルをイメージして“金・銀・銅”の文字を添え、その文字を、それぞれ金色、銀色、銅色にするのだという。でも、金色や銀色は特殊な色だからプリントできない。なるべく近い色を選んでみたが、想像と違ったようだ。
「それじゃ、こっちの色にしてみよう」 再びプリントしてみる。「これに決定!」
やはり、一度プリントしてみて、文字や色を修正できたのは正解だったようだ。
修正が済むと、いよいよ、エプソンの大判インクジェットプリンタ・マックスアート『PM-7000C』を使って印刷。プリンタからA2のビッグサイズで新聞が出てくると、子どもたちから歓声があがった!
操作にとらわれることなく、自由に表現してほしい
「もうすぐ卒業ということもあって、この作品を評価することは考えていません。卒業の思い出に、自由に作ってもらいました」と、三崎先生。
パソコンが屋島小学校に導入された当時は、電源の入れ方から教えなければならず、大変だったという。現在の6年生は、低学年のころからパソコンに触れ、学年ごとに目標を決めて授業に取り入れてきた。それが実を結び、今では新しいソフトを使うときだけ説明をすれば、自分たちの力でパソコンを操作できるまでになっている。先生の指導も、パソコンの使い方ではなく、内容に集中できるという。
授業でパソコンを使う利点について三崎先生は、「例えば調べ学習をする場合、図書館の資料と比べて、インターネットではリアルタイムの情報を得ることができます。でもホームページ上のものは、すべてが正しいわけではない。判断力を身につけるためにも、インターネットリテラシーを、もっと高めていく必要があります」と、今後の課題を指摘する。
さらに、これから先、子どもたちにどのようにパソコンに接してほしいかを聞いてみると、「子どもたちが将来、職場などで、パソコンの操作自体にとらわれることなく仕事ができるようになってほしいと思います。だから、授業で使えるところは、どんどん使っていますよ。パソコンを使って表現力を高めて、さらにコミュニケーションツールとして活用することで、自分から発信する力を身につけてもらいたい」。
パソコンを表現やコミュニケーションの道具として使うには、ある程度、操作する能力を身につけることが不可欠だ。指導する側も“道具を使う練習”と“道具を使って表現をすること”のバランスを取りながら授業をすすめることが大切になる。
それぞれの思い出を胸に、4月から新しいステージに向かう子どもたち。みんなの未来には、何が待っているのだろう。
明治20年創設の伝統校で、昭和のはじめまでは学校の敷地は塩田地帯だったという。近くには風光明媚な自然が残る溶岩台地「屋島」が広がり、『総合的な学習』の時間では、自然をテーマにした「屋島学習」に取り組んでいる。2002年度の「放送教育四国大会香川大会」の小学校部会場(10月22日開催)。児童数720名。